第 20 集:「為了新的浪潮」-「在波濤間閃爍,那一天的勇氣」。

黒川修二(くろかわ・しゅうじ)先生の“盗難”事件をめぐって、
足を痛めたままインターハイ予選に挑んだキャプテン・篠田晃(しのだ・あきら)先輩。

結果は、足の激痛に耐えきれず途中棄権。
望んでいた活躍は叶わず、さらなる怪我を負い病院での治療が必要となった。

 

一方、先生も謹慎処分が続き、部には戻れない状態。
かろうじて見守ることしかできず、自責の念を抱えたまま日々を過ごしている。

 

だが、篠田先輩は「後悔はしていない」と言いつつも、足の治療と卒業後の進路に悩み、
先生は過去のトラウマを払拭できぬまま“生徒を失った顧問”として立ち尽くしている。

 

このままでは、何もかもが中途半端な苦しみに飲み込まれてしまう――。

そんな状況の中、部員たちは最後の“和解”へ向けて一筋の希望を見出そうとしていた。

果たして篠田先輩と先生は、本当に**「新しい波」**を迎えることができるのか。

 


 

1. 病院に差し込む朝日

 

――退院の日。

足首にギプスを巻き、松葉杖を頼りに歩く篠田先輩は、病院の会計を済ませ、ロビーの椅子で一息をついていた。

横には航平(相沢航平)とマネージャーのひなた(橘ひなた)が付き添い、
「先輩、無理しないで」「荷物はこっちで持ちます」と世話を焼く。

 

「悪いな……本来なら親が迎えに来るべきなんだろうが、親父も仕事が忙しくてさ。
 お前らが来てくれて助かるよ」

 

篠田先輩は照れくさそうに微笑む。
以前のような苛立ちやトゲトゲしさは薄れていて、少し落ち着いた様子。

 

「医者になんて言われました? またサーフィンできますか?」

ひなたがそっと尋ねると、先輩は肩をすくめ、

「リハビリ次第だって。
 でも“無理すると一生物の後遺症が出るかも”とは言われた。
 つまり、楽観視はできないってことだな」

 

苦笑を浮かべる先輩。
航平は胸が痛むが、同時にホッとしている部分もある。

(少なくとも“一生足が動かない”ほどではないらしい。リハビリすれば復帰の可能性があるかもしれない)

 

「……そっか。 まずは無理せずリハビリに集中してください。
 卒業も迫ってますし、大変だと思いますけど、僕らも手伝えることがあれば……」

 

「ありがとう。
 お前らには本当に迷惑かけっぱなしだな」

 

先輩はそう言って照れ笑いを見せ、ゆっくりと立ち上がる。


 

2. 沙季先輩からの連絡

 

ちょうどその時、先輩のスマホが鳴る。
見れば沙季先輩(川久保沙季)からの着信だ。

 

「先輩、どうする? 出ます?」
ひなたが問うと、先輩は「出る」と即答し、松葉杖を腕に掛けたまま電話に出る。

 

『篠田先輩、退院したんでしょ? 今どこ? 私、午後はオフだから病院に顔出そうかと思ったけど』

 

沙季先輩の声が明るいが、やはり気遣いが伝わる。
先輩は「もう出ちゃうところ。わざわざ来てもらわなくていい」と返すが、彼女は何か言いたげに続ける。

 

『うん、じゃあ退院祝いは部室でやりましょう。みんなお菓子とか用意してるらしいよ。
 リハビリは大変かもしれないけど、私もインターハイ本戦の前に会いたいし』

 

どうやら沙季先輩は既に本戦に向けて動いているが、キャプテンを蔑ろにするつもりはないらしい。

 

「ふん……部室に行くほど元気じゃないが……まぁ行くか。
 足がこんなんでも、久しぶりにみんなに会いたいし」

 

先輩は電話を切って、航平たちを見やる。
「すまん、足が不自由だから、悪いけど荷物手伝ってくれ」

 

「もちろんです!
 沙季先輩もインターハイ本戦があるのに、先輩を気にしてくれてるんですね」

ひなたが笑顔を見せると、先輩は小さく笑い、「あいつらしいな」と頷く。


 

3. 部室への帰還――待ち受けるサプライズ

 

午後、学校の部室へ到着すると、中には沙季先輩はもちろん、大谷や他の部員たちが待機し、簡単な飾り付けやお菓子を用意していた。

 

「先輩、おかえりなさい!」
「足、大丈夫か?」

生徒たちが口々に声をかけるが、先輩は照れたように「うるせえ、入院しただけだ」と素っ気なく言う。
それでも会えたことにホッとしているのか、少し顔が和らいでいるのがわかる。

 

部員たちは、「いま顧問はいないけど、先輩が来てくれたら嬉しい」「無理しないでほしいけど、待ってたよ」と次々声を掛ける。
先輩は松葉杖をつき、「ありがとな」と短く応じる。

 

その中で、航平は気になる気配を感じる。
廊下の奥に、スーツ姿……いや、カジュアルな私服姿。
少し遠慮がちに立っている背格好は、黑川博士に似ていた。

 

'老師 ......!
航平が小声で呟くと、先生は会釈をして空気を読んだように廊下を引き返そうとする。

(先生、来てくれたんだ! でもどうする……謹慎中だけど、部室へ顔を出すのはタブー。 だけど先輩に会いたいはず)

 

航平は心が急に熱くなり、ひなたを見る。
ひなたも気づいたらしく、先生のほうへ急ぎ足で向かおうとする。


 

4. “これでいいんですか?” ひなたの問いかけ

 

廊下へ出ると、先生は慌てて逃げるように背を向ける。
ひなたが大きめの声で呼びかけた。

「先生……! 篠田先輩、退院しました。 今、部室にいるんです」

 

先生は少し止まるが、「謹慎中だから……」と消え入りそうな声を出す。

 

「でも、先輩も話したがってるんです。
 “後悔していない”って先輩は言ってます。 でも、先生はそれを信じてるのかな?」

 

ひなたの言葉に、先生は苦い表情を浮かべ、振り返る。

「……もう、あいつに会う資格はない。 あんな大怪我を負わせておいて、どの面下げて会えば……」

 

「そんなことないです!
 先輩も先生に言いたいことがあるはずだし、
 私たち部員だって先生に帰ってきてほしい。
 色々あったけど、先生がいないと部が成り立たないんです!」

 

涙ながらに叫ぶひなたに、先生は困惑の表情を見せる。

 

「俺は盗難犯だぞ。 まだ校内での処分も確定してない。 辞めるかもしれないし……」

 

「それでも、今しかないんです。
 先輩が退院した今日、先生が来てくれたのだって偶然じゃない。
 どうか、部室へ来て先輩とちゃんと話してください!」


 

5. 奇跡の遭遇――篠田先輩と先生

 

航平も廊下に出てきて、先生の姿を見つけ、「先生、お願いします」と頭を下げる。
部室内の部員たちも気配に気づき、「もしかして先生が……?」と騒ぎ始める。

 

そこで、篠田先輩も松葉杖を突いて出てくる。
足を引きずりながら、「マジかよ。黒川先生、来てんのか?」と視線を向ける。

 

先生は動揺し、逃げるように一歩下がるが、先輩が「待てよ、何で逃げるんだ」と声を上げる。

 

「……盗みやがった罪人でも、ちょっと顔くらい見せろよ。
 俺はもう足を痛めたし、あんたは謹慎中だし、どうせ同じ負け組だろ?
 会う資格がないなんて言わないでくれよ」

 

棘のある言い方に、先生は唇を噛むが、その言葉に苦笑するように少し顔を上げる。

「悪いな。 俺……お前に何も言えないと思って……」

 

「何も言うな、とは言ってない。
 かといって特別に“ありがとう”とも言わねえけど……。
 とりあえず、久しぶりに直接会ってやるから、少し入りゃいいじゃん、部室に」

 

先輩がテレながらも言うと、先生は目を潤ませ、「いいのか……」と弱々しく返す。
部員たちは入り口付近で“顧問とキャプテンの再会”を固唾を飲んで見守る。


 

6. 部室での「おかえり」ムード

 

部室の空気が一瞬緊張に包まれるが、
航平やひなた、沙季先輩、大谷らが混じってサポートし、何とか雰囲気を和らげる形に。

 

黒川先生はやつれた表情のまま、「すまない……盗難犯の俺が来るなんて不謹慎だが」とうつむく。
篠田先輩は松葉杖で身を支えながら目を細め、

「お前が盗んだせいで俺は練習不足で足をぶっ壊した……と責める気にもなれないよ。
 怪我は俺自身が望んだ挑戦の結果だからな。 そこはもう言わない」

 

先生は息を呑む。
そう、「後悔してない」と先輩が何度も言い張ったポイントだ。
だが先生は涙ながらに一気に言葉を吐き出す。

 

「本当に……後悔してないのか? あんな大怪我を……。
 お前がもうサーフィンできなくなる可能性だってあるんだぞ。 お前の才能は俺が一番知ってたのに……!」

 

「先生こそ、俺がこの足で大会に出るのを止めたかったんだろ? でも止めきれなかった。
 盗難なんてやり方、間違ってたって自分でわかるだろ?」

 

火花が散るかと思いきや、先輩は語気を落として静かに続ける。

 

「でも俺、あの波に乗ったとき、足が痛くても確かに“今ここに生きてる”って感じがしたんだ。
 その結果がリタイアかもしれないけど、何もせず安全に過ごしてたら一生悔やんでた。
 先生は“後悔しない道”を俺に用意したかったのかもしれないが、俺が選んだ道はこれだよ」

 

先生の瞳に涙が溢れる。
「お前……そんなに覚悟してたのか」

 

先輩は苦笑して目を伏せる。

「まあ実際に痛かったし、今もこうしてギプスだし、バカみたいだよな。
 でも、俺は本当に後悔してない。 だから先生も罪悪感ばかり抱えて泣くなよ。
 お前のせいで怪我が悪化したなんて言うつもりもない。
 むしろ、あのときボードが戻ってきただけで俺は満足だ」

 

先生はハンカチで目を押さえ、「ありがとう……」としゃがみこむ。
「本当に申し訳ないし、何も言えないが……俺はお前が足を壊す姿を見て、本当に苦しくて……。
 でも、そうか……わかった。 お前がそう言うなら、少し気が楽になった。
 俺はもう何も……止められないけど、せめてちゃんとリハビリをして、いつか戻ってきてくれ。 それが、俺の最後の願いだ」

 

篠田先輩は少しだけ照れながら松葉杖に体重を預け、
「……医者に『焦らず治せ』って言われてる。 どうなるかはわからないが、試す価値はあるかもな」と呟く。


 

7. 拍手と涙の再会

 

部員たちが二人のやり取りを見守りながら、ポロポロ涙をこぼす者もいる。
ひなたは号泣しながら拍手し、「先輩、先生……よかったぁ」と声を震わせる。
航平や大谷も「まさかこんな形で二人がちゃんと話せるなんて」と安堵している。

 

「先生が戻ってこれるかはまだわからないけど、こうやって会ってくれるだけで救われるよね」

航平がつぶやくと、大谷もうなずく。「ああ、俺らが見たかったのはこの光景だな」

 

沙季先輩は少し離れたところで微笑し、「先輩が何とか立ち直れそうでよかった」と胸を撫で下ろす。


 

8. 部の新体制――沙季先輩と航平

 

数日後、黒川先生は校内処分について“謹慎延長”という形で協議中。
辞めるかどうかはまだ結論が出ていないが、部員たちは「先生が戻ってきてくれたら……」と淡い期待を抱いている。

 

沙季先輩はインターハイ本戦に向けて練習を加速。
部員のモチベーションも少しずつ回復し、残るメンバーは「来年こそ頑張ろう」と意欲を取り戻している。

 

一方、篠田先輩は病院と自宅を行き来しながらリハビリを始め、足を治すことに集中している。
「卒業後、どうするかはまだ未定だけど、大学サーフィンを考えてる」と漏らすようになった。
“もう一度、波へ立ちたい”という思いが少しだけ芽生えているのだ。

 

そして、航平(相沢航平)自身も、
“事件が落ち着いたら本格的にサーフィンを始めたい”という意志を固める。
ひなたも「私もやりたい!」と笑い、二人で沙季先輩の手ほどきを受ける計画が進んでいる。


 

9. ――航平とひなたの約束

 

放課後、部室で片づけをしながら、航平とひなたが雑談モード。
事件後の疲れもあって、二人は「これからの部活」を話題にする。

 

「ねえ航平くん、先生がもし戻ってきたら、私たちもきっと波に乗る練習できるね。
 先輩は足が治ったら大学でもサーフィン続けるかもしれないし……。
 なんか夢が広がるなぁ」

 

ひなたは嬉しそう。
航平はその笑顔にドキリとしながらも、慎重に言葉を紡ぐ。

 

「そうだね。
 俺はこの事件を通して、サーフィンって怖いけど魅力的だと思った。
 怪我のリスクはあるけど、先輩みたいに挑戦する姿が格好いいとも思った。
 ひなたも一緒に始めるって言ってたよね?」

 

「うん。最初は怖かったけど、これだけみんなが真剣にサーフィンを愛してる姿を見てると、私もやってみたくなったの。
 一緒に練習しようね、航平くん!」

 

そこで、二人は顔を見合わせ、微笑み合う。
まるで春先に新しいスタートを切るような温かい空気が流れる。

 

大谷が後ろから「お前らイイ感じだな~」とからかうが、二人とも赤面しながら「うるさいっ」と返す。


 

10. 篠田先輩と先生の未来

 

そして数日後、謹慎中の先生と篠田先輩がもう一度だけ面会する。
先輩は松葉杖で少し歩けるようになり、先生を呼び出したのだ。

場所は、静かな海岸の公園。
朝の潮風が冷たいが、周囲に人気はない。
ふたりが向き合い、軽く挨拶を交わす。

 

「先生、その……足はこんな感じだけど、意外ともう少し動きそうだ」

「そっか……よかった。
 無理せず、リハビリ頑張れよ。 お前が本気で“もう一度波に乗りたい”と思うなら、俺は協力したい。
 謹慎が解ければ、だけどな……」

 

先輩は苦笑して「まあ、また盗むとかやめてくれよ」と冗談ぽく言い、
先生も「もう二度としない」と微笑む。

 

そこで先輩が、歯がゆそうに話を切り出す。

「俺はプロを目指すかどうか、まだわからないけど……足が治れば海に戻る気はある。
 そんときは俺なりに考える。先生みたいにトラウマにならないように、ちゃんと止める人がいてくれたら助かる。
 でも、強引にボード盗むのはナシな?」

 

先生は肩を震わせて笑う。

「当たり前だ。
 今度は正面からアドバイスするよ。 お前が怪我を抱えながら波に乗るなら、もっと安全策もあるはずだ。
 俺が高校時代に失敗した分、経験を生かしてサポートするから……謹慎が解ければ、だけど」

 

先輩は「ふん」とそっぽを向きながらも、「ありがとな」と小さく声を出す。

こうして、二人はやっと本当の“和解”へと足を踏み出す。
同じ後悔を背負わせたくなかった先生と、自分の意思で怪我を覚悟した先輩。
それぞれが自分を取り戻し、いつか同じ海で笑い合える日が来るかもしれない。


 

11. サーフィン部の新時代

 

その後、沙季先輩は本戦に出場し、善戦の末に上位には食い込めなかったものの納得の戦いを見せる。
部員たちも応援に駆けつけ、次なる目標を見定める意欲が湧いている。

 

黒川先生はまだ正式には謹慎解除されていないが、辞職までは免れる見通しが出てきた。
校長らとの面談でも「反省し、謹慎を終えたら部顧問を続けさせたい」という生徒・保護者の嘆願が大きく影響しているらしい。

 

篠田先輩は退院後、自宅療養&リハビリに専念し、部には顔を出さずにいるが、「完治したらまたボードに乗りたい」と思い始めている模様。
そして卒業後は大学進学を検討。「足が治れば大学サーフィン大会もあるかも」なんて小声で呟く。

 

すべてが元どおり……とはいかないが、部に新しい風が吹き始める。
挑戦を恐れず踏み込んだ末に怪我をした先輩の姿、盗難までして守りたかった先生の愛情――
その痛みや想いを共有することで、部員たちは次なる一歩を進めるのだ。


 

12. 航平とひなた――波を求めて

 

インターハイシーズンも終わり、少し落ち着いた冬の海。
ある放課後、航平とひなたは部室に向かう。
途中、大谷が「おお、お前ら本当に始めるのか?」とからかう表情。

 

「うん。 篠田先輩や沙季先輩みたいにすごいプレーはできないだろうけど、まずは初心者練習からね」

ひなたが目を輝かせる。
事件を通して得た“波への興味”が大きく膨らんでいる。

 

航平も胸が熱い。

「俺も正直、怪我が怖かったけど、先輩を見て考えさせられた。
 挑戦するかどうかは自分が決めることだし、足を壊すリスクはあるけど、それ以上に波に乗る楽しさがあるはずだ……って」

 

大谷は「おう、楽しみにしてるぞ。やらかして足折るなよ」と軽口を叩きながら、部室の鍵を開けるのを手伝う。
そこにはお古の初心者ボードが用意されている。
先生がいない今、沙季先輩や経験者たちが基礎を教えてくれる予定だ。

 

ひなたが手のひらを重ねるように航平とハイタッチし、「頑張ろう!」とウキウキしている。
二人の距離は近づきつつあり、周囲の部員は「うわーお似合いだわ」と微笑ましく見ている。


 

13. 回想――先生の手紙

 

数日後、先生から篠田先輩に一通の手紙が届く。
リハビリ中の先輩が、それを病室で受け取り、苦笑する。

『お前が将来、もしもう一度波を目指すなら、俺にできることは全部教えたい。
 今度こそ盗みや妨害じゃなく、正々堂々とサポートしたい。
 俺が高校時代に学んだことを伝えたい。
 だから、リハビリを焦らずに……まずは足を大事にしろ』

 

先輩は手紙を読み終わると、窓の外の空を見つめて小さく頷く。

「ふん……またおせっかい焼きやがって。
 でも、まあ、悪い気はしないな」

 

その手紙をそっと引き出しにしまい、
先輩はリハビリメニューを眺める。
全治まで時間はかかるが、“いつか海に戻る”道が、すぐそこに見え始めていた。


 

14. エピローグ――新しい波

 

卒業式の日
篠田先輩は松葉杖で、制服姿のまま校舎を歩き、
ひなたや航平、沙季先輩など部員たちと笑い合う。

「先輩、おめでとうございます!」
「足、まだ痛そうだけど大丈夫?」

 

「まあな。あと数か月はリハビリ漬け。
 でも卒業後は大学へ行くよ。サーフィン続けるかは足次第だけど、可能性はゼロじゃない」

 

その顔に以前の暗さはない。
先生の姿は見当たらないが、周囲の空気は穏やかで、皆が先輩の未来を信じている。

 

夜、篠田先輩が松葉杖をつきながら、海辺の公園を散歩していると、遠目に帽子を被った先生のシルエットが……。
二人は互いに気づきつつ、言葉は交わさない。
だが、視線を合わせ、小さく会釈する。

いつか、本当の意味で一緒に波と向き合える日が来る――そう感じさせる静かな交感。)


 

◆ 部のその後

  • 黑川博士:謹慎処分が延長のち、一部の裁量で「次年度から復帰」する可能性が示唆。
    退職は免れそうだが、正式決定はまだ先。
    ただ部員たちが「先生戻ってきて」と声を上げてるため、校長も前向き。
  • 筱田前輩:卒業後、リハビリを優先。
    足が回復すれば大学サーフィンにも挑戦したい気持ちが芽生えている。
    「いつかまた、あの波へ立つ」――黒川先生への“リベンジ”ではなく、自分の意思で。
  • 川久保沙季先輩:インターハイ本戦での経験を糧に、次の大会を目指す。
    部では新キャプテンとして存在感を増し、「先生が戻るならしっかり連携する」と頼もしいリーダーに。
  • 航平&ひなた:初心者サーファーとしてボードに慣れ始め、海で何度も転びながら笑い合う。
    いずれ大谷も巻き込んで「初心者三人組」で活動か?

——完——

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