第20集:步步高升!~ 我不敢相信我會成為舞圈的領袖!~.

第20話「抱き合う喜びと、その先へ」

1. ステージを終えたあとの高揚感

 文化祭ステージが終わり、大きな拍手と歓声に包まれながら私たちが舞台袖へと戻ってくると、そこには先輩や他サークルの友人たちが待ち構えていて、笑顔で「お疲れー!」と声をかけてくれた。
 いつもと違う衣装に汗が染み込み、息は絶え絶え、それでもサークルのメンバー同士で視線を交わすと、自然と笑みがこぼれる。その笑顔は、合宿や練習で積み重ねてきた苦労や不安をすべて昇華させた、純粋な喜びそのもの。

 私はリーダーとして、何か気の利いた言葉を発しようと考えつつも、喉が震えて言葉にならない。ただ、自然に目頭が熱くなり、となりにいた**佐藤 真琴(さとう まこと)**が私の肩を叩いて「小春、泣くなよ~! でも……アタシも泣きそう!」と声を震わせている。
 真琴自身、足首に不安を抱えながらも最後まで踊りきったのだ。痛みをこらえた表情だったが、それは達成感を帯びた明るいものに変わっている。翔や咲など、ロックパートを一緒に盛り上げたメンバーが「真琴先輩、マジでカッコよかったっすよ!」と興奮気味に称える。


2. 楽屋裏での抱擁、そして安堵の涙

 私たちは周囲の拍手や歓声に後押しされるように、楽屋裏へ移動。そこには先輩のRica Aoyamaが目を潤ませて待っていた。「すごく良かったよ、みんな! 本当に頑張ったね……!」と言うや否や、私と真琴をぎゅっと抱きしめてくれる。その勢いで、私も真琴も思わず涙がどっと溢れて止まらない。
 まわりにいた大谷 翔和 ... 和Mayu Suzuki,,宮田 シズク、初心者組のメンバーも「もう、最高だったよね!」と次々に抱擁の輪が広がり、あちこちで泣き笑いの声が混じり合う。

 合宿で衝突したり、リハ不足で不安に押しつぶされそうになったり、それでも立ち止まらずに走り続けた日々。私、**桜井 小春(さくらい こはる)**は今、メンバー一人ひとりが感極まっている様子を見て、リーダーとして最高の瞬間を迎えているんだと実感する。
 「こんな気持ちになれるなんて……本当にやってよかったね、リーダー」
 真琴が涙声で私に囁き、私は頷くだけで精一杯。


3. 観客からの好評、他サークルからの称賛

 楽屋で一息つき、少し落ち着いてからステージ裏を出ると、ちょうど出番を終えたばかりの他サークルのメンバーや模擬店のスタッフが通りかかる。「見たよ、めっちゃ良かったじゃん!」「あのロックパート燃えた!」と声をかけられるたび、私たちは照れくさいような嬉しいような気持ちで返事をする。
 合宿前はまとまりに欠け、何度も衝突してきたサークルだったのに、今こうしていろんな人が「よかった」と言ってくれるのは素直に感謝しかない。私自身、リーダーとして彼らをちゃんとステージに導けたのか不安だったけど、少なくとも結果は残せたのだと思える。

 さらに、OBの斜嘴さんやクラスメイトたち、他サークルの友人たちも挨拶に来てくれ、「鳥肌立った」「足首の人、あれで踊れるのすごい」「初心者があんなに揃って踊るとは」など口々にコメント。真琴は「足首アピールしないでよ~!」と苦笑しつつ、「あーもう……いろんな意味でヤバいね、こんなに褒められるなんて」と照れている。


4. サークル打ち上げ、語り合う思い出

 その日の夕方。文化祭自体はまだ続いているが、私たちダンスサークルは一段落したので、早めの打ち上げをしようという話になった。近くの学食が臨時営業していて簡単なパーティができるとのことで、メンバー全員と先輩数名が集まり、長テーブルを囲む。
 飲み物や軽食を並べて「お疲れー!」の掛け声で乾杯(ソフトドリンクだが…)。真琴が「わー、足が痛いけど飲むぞ……ジュースだけど」と笑って言い、初心者組が「マジで最高でしたね!」とテンションを上げる。

 合宿の思い出話や、リハの大失敗を振り返って大爆笑したり、曲順やフォーメーションで苦労した点を「あの時はヤバかったよな~」と茶化したり。賑やかな声が絶えない打ち上げ風景に、私は「このサークルって、本当にいいチームになったんだな……」としみじみ感じる。
 翔や真由が「やべぇ、もう踊りたくなってきた!」などと騒ぎ、シズクが「ちょっと落ち着いてよ……」といつものクールさで宥めつつ微笑む。何もかもが懐かしく、そして愛おしい瞬間だ。


5. リーダーとして学んだこと

 打ち上げの終盤、先輩のRica Aoyamaが「そういえば小春、リーダーになった経緯って最初は嫌がってたよね?」と振り返る言葉を投げかけてきた。その問いに、私は苦笑しながら頷く。
 「はい……自信なんてまったくなかったし、みんなまとめるなんて無理だと思ってました」
 すると、真琴や翔、シズクらが「最初はグダグダだったよね~」「小春、めっちゃオロオロしてたし」と口々に笑う。私も「うっ……否定できない」と赤面。

 だけど、合宿や衝突、衝突を乗り越えて、今回のステージをやり遂げた。リーダーという役割は、すべてを完璧に仕切ることではなく、みんなの力を信じて、失敗を恐れず前へ進むことだと痛感した。
 「それに……私が先頭を走ってるわけじゃなくて、みんなが背中を押してくれてたからできたんだと思います」と言うと、「おお、いいこと言うじゃん!」と翔が拍手し、真琴はしみじみと「アタシらも小春にまとめてもらえたから、こんなすごいステージ作れたと思うよ」と応えてくれる。
 なんだか胸がいっぱいになり、もう一度涙腺が緩んでしまいそうだ。


6. それぞれのこれから

 打ち上げが落ち着いた頃、初心者組から「来年も文化祭で踊りたい!」という声が聞こえてきたり、翔が「就活までまだ時間あるし、もっとサークルを盛り上げようかな~」とぼんやり言ったり、真由が「私、衣装制作に興味湧いてきたかも!アパレル系に就職とかありかも」と夢を語ったり。皆それぞれの「これから」について明るく話している。
 真琴は足首を押さえながら「まずはしっかり治して、今度は完全復活だな!」と笑う。その元気な声に、まわりが「それは絶対!」「今度は存分にジャンプを見せてくださいよ!」と盛り上がる。

 私自身は将来の進路はまだはっきりしていないけれど、リーダーをやり遂げた経験が自分の中で大きな自信になっている。社会人になっても、何か新しいことに挑戦するとき、このステージを思い出すだろう。「あの時に一歩を踏み出せたから、今度もできる」と思える、そんな礎ができた気がする。


7. 最後の円陣、忘れられない瞬間

 打ち上げ会場の片隅で、ふと誰かが「やっぱり最後は円陣で締めようよ!」と声を上げる。合宿や文化祭前の練習でたびたびやってきた円陣が、今夜一番の感動的な瞬間をまた生み出す。
 全員が肩を組み、輪になって顔を見合わせる。真琴と咲が隣同士で照れ笑いし、翔が「じゃ、いくか」と声を張る。私がリーダーとして、言葉をかける役目を自覚しながら、少し恥ずかしいけど思い切って口を開く。
 「みんな、本当にありがとう……。合宿や練習で大変だったけど、今日、最高のステージを作れました。私もリーダーとして自信なかったけど、みんなが支えてくれて、こんなすごい瞬間を迎えられた。きっと一生忘れないと思います。これからも、みんなでステップ・バイ・ステージしていこう!」

 泣き笑いが混じった掛け声のまま、全員が「うおおーっ!」と応える。拍手が起こり、真琴が「足が痛いけど、もうちょっとだけ我慢!」と叫びつつ、円陣の中心で笑う。シズクは小さく微笑み、真由は「マジでサイコー!」と涙を拭い、初心者組も興奮した顔でハイタッチし合う。その光景を見て、私もまた胸が熱くなる。


8. その先の未来へ――

 こうして、私たちの文化祭ステージは大成功に終わり、サークル全員がひとつになって喜びを分かち合った。長い道のりだったけれど、合宿やミーティング、トラブルを乗り越えた末に、本当に輝かしい時間を得ることができた。
 私は今、リーダーとして感じたのは「失敗や不安があっても、仲間と一緒なら乗り越えられる」という大きな実感。特に真琴の足首問題が克服された姿は、私自身の勇気になった。翔の盛り上げ力やシズクのクールな指揮、真由の衣装・小物へのこだわり、初心者組の吸収力……すべての要素が噛み合った結果があのステージだと思う。

 これから私たちが進む道は、サークル活動だけでなく、就活や卒業後の進路など様々だろう。だけど、この経験が「新しい一歩」を踏み出すきっかけになるはずだ。
 「やっぱり、挑戦してみるって楽しいんだよね」
 合宿前はリーダーなんて荷が重いと思っていた私が、今はそう素直に思える。失敗や衝突を恐れずに“ステップを踏む”ことで、仲間と一緒に新しい景色を見られる。

 分階段――学生時代の熱量は、一度限りじゃない。たとえ社会人になっても、その一歩を踏み出す勇気を思い出せば、必ず未来は開けるはずだ。
 「もう、何があっても大丈夫。新しい挑戦もきっと楽しめる!」
 私の心には、そう確信できる強さが芽生えている。リーダーとして苦労した分、その喜びと成長を手にできたのだから。

 そして今、仲間の笑顔を見つめながら、この一生忘れられない瞬間を胸に刻む。いつかまた、新たなステージで踊る自分を思い描きながら、私は前を向いて歩き出すのだ――。


終わりに

 こうして、私たちの文化祭ステージは幕を下ろした。ドタバタ青春コメディの中で得た経験は、社会人になってもきっと役立つだろう。挑戦することの素晴らしさ、リーダーシップの難しさとやりがい、そして仲間と何かを成し遂げる喜び――このステージから学んだ宝物を抱えて、私たちはそれぞれの未来へ飛び出していく。

 分階段は終わらない。次の挑戦を探しながら、これからも一歩ずつ踊り続けるのだ。

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