第14集:步步高升!~ 我不敢相信我會成為舞圈的領袖!~.

第14話「高まる期待と焦り、そして奇跡のロックパート再編!?」

1. 文化祭直前モード、さらにヒートアップ

 大学構内には、まるで学園祭ならではの熱気が漂っていた。模擬店の看板が林立し、ステージプログラムのポスターが廊下を埋め尽くす。
「あと2週間……じゃなく、もう10日くらいしかないんだよね……」
 私はリーダーとしてサークル活動を引っ張るSakurai, Koharu。朝、ホームルームの合間にふとスケジュール帳を覗くと、そこには予定やタスクがびっしり。焦りと期待が入り混じって、胸がざわざわする。

 そんな気分のまま、放課後のダンスサークル練習室へ足を運ぶと、メンバーが集まり始めていた。瑶琴,,白豆蔻,,飛行,,真由、そして初心者組の面々も、みな落ち着かない様子でストレッチをしている。
「よーし、みんな! 今日はロックパートの最終形態を見極めたいし、各パート通しもやりたい。練習時間をうまく使おう!」
 声を張り上げると、「おーっ!」という気合の声が返る。とはいえ、それぞれの胸中には複雑な思いがあるはずだ。


2. 真琴の足首、奇跡の回復?

 ここ数日、**佐藤 真琴(さとう まこと)**は医者からリハビリの許可をもらい、慎重ながらも足を動かし始めている。捻挫の痛みはだいぶ引いたようで、少しずつステップを踏む姿を見せるようになった。
「昨日、病院で診てもらったら『順調に回復してるね』って言われた。リハビリ次第では本番間に合うかも!」
 真琴が生き生きと話すと、周囲は「おおっ!」と盛り上がる。特にロックパートの皆は、「やっぱ真琴がいると違うよね!」と期待のまなざしを向ける。

 しかし、まだ完全に元通りというわけではない。合宿前のような大ジャンプや激しい回転ができるかは微妙だし、本番当日までもう10日程度という時間の少なさもある。真琴自身も「まだ無茶はできないよ」と繰り返す。
 そこで私とシズクは「基本はプランB(翔&咲がメイン)をキープしつつ、真琴が元気に動けるところは部分的に参加してみる」――いわば**“プランC”**を本格的に試すことに決めた。


3. ロックパート三人体制!? 初の試験運用

 早速、ロックパートの練習時間。**大谷 翔(おおたに しょう)と初心者組の中村 咲(なかむら さき)**がセンターで踊り始める。真琴は後方で様子を見ながら、サビに向けて徐々にフォーメーションに加わる作戦だ。
「5、6、7、8!」
 イントロで翔と咲が掛け合いをし、そこへ真琴が横からスッと合流する動き。無理をしないように踏み込むが、流石に真琴のキレは健在で、動きに“熱さ”が戻ってきた。

 しばらく踊ったあと、最後のサビに入る場面で真琴が一段高くステップを踏む。まだジャンプは低めだが、その“らしさ”は十分伝わる。翔は「おおー、真琴、すげえ!」とテンション上げ、咲も「先輩、やっぱり迫力がありますね!」と嬉しそう。

 練習を終えて音楽が止まると、周囲のメンバーが拍手して口々に感想を述べる。
「三人それぞれ違うノリがあって面白いよ! 翔のコミカルさ、咲の真剣さ、真琴のパワーが混ざってる!」
「なんだか昔の真琴ワンマンロックパートとはまた違う魅力があるかも……!」

 真琴は少し息を切らしながら、苦笑い。「まだ痛みは完全にはないわけじゃないけど、動けるとやっぱり楽しい……!」と目を輝かせる。その表情を見るだけで、私は込み上げるものを感じる。


4. 衣装と照明、最終調整に大わらわ

 一方、**鈴木 真由(すずき まゆ)**は衣装・小物の統括として、文化祭ステージに向けた最終チェックに追われている。
「K-POPパートの髪飾り、ちょっと在庫が足りないかも! 追加で買うなら送料がかかるし……」
「ディスコパートの腕に塗るペイント、暗転が短くても使いたいよね? でも照明の色次第じゃ目立たないかもしれないし……」

 バタバタする真由に付き合うのは飛行と初心者組数名。ネットで小物を探したり、サークル室で試しに照明を落としてみたりと試行錯誤が続く。
 「ここまで来たら自己満で終わらず、観客にしっかり伝わる演出にしたいからね!」
 真由が意気込む姿を見て、私もなんとか力になりたいと思うが、私自身はロックパートや全体調整などで手が離せない。
「うん、真由がまとめ役を頼む……! 何か困ったことがあったら声かけて!」
 私が言うと、真由は「了解! もうひと踏ん張りがんばる!」と満面の笑みを浮かべる。


5. 音響スタッフとの追加連絡、練習室での臨時テスト

 幾天後Rica Aoyama先輩が“ステージ裏での音量テスト”について追加情報をくれた。なんでも、文化祭前週にステージスタッフが学内機材室に機材を運び込む際、余裕があれば短時間の試用が可能かもしれないという。
「本格リハじゃないけど、当日の音量環境に近い形でメドレーの一部を流してみるチャンスがあるかも……! ただし確約はできないって話だけどね」
 リカ先輩が申し訳なさそうに言うが、私たちとしては少しでも可能性があるならぜひお願いしたい。翔も「そりゃもう“ワンチャン”でも試したいっす!」と鼻息を荒くする。

 こうして、文化祭本番まであと10日を切った中、音響リハ時間がほぼない状況をなんとか補うため、小さな望みを追いかけるチーム。練習室でも機材を持ち込み、臨時テストを重ねる日々が続く。


6. 初心者組の意外なライバル宣言?

 ロックパートが“三人体制”に落ち着きそうだという噂を聞きつけた初心者組の男子メンバー――**佐々木 拓也(ささき たくや)**が、妙に燃えているらしい。
「咲ばっかり注目されてるけど、俺もディスコパートでもっと目立ってやる!」
 どうやら、“ロックパートでセンターをする咲”に触発され、「自分もステージでインパクトを残したい!」という気持ちが強くなったみたいだ。

 ディスコパートでの中心は翔だが、拓也はアクロバットまでいかないまでも軽いトリックを研究中とのこと。「俺も何か新技を披露したい」などと言い出し、真琴に「無茶すんなよ!」と突っ込まれる場面も。
 ふと私は、「こういう前向きな競争が初心者組の活性化に繋がるんだな」と感じる。合宿前は自信なさげだった拓也まで、ここまでやる気を出してくれるのは嬉しい限りだ。


7. 三人体制でのロックパート、全体通し練習!

 そして迎えた週末。文化祭前の全体通し練習が行われることになった。これはほぼ本番に近い形で、メドレーを最初から最後まで踊り、衣装・フォーメーション・音響(練習室レベル)を総チェックする重要な日だ。
 集まったメンバーは20人以上。初心者組も全員そろい、合宿を思い出すような熱量に包まれている。
「それじゃあ、ロックパート→クールパート→K-POPパート→ディスコパート、最後に集合ポーズ。通しでいくよ!」
 私がノートパソコンの再生ボタンを押すと、スタジオにロックのイントロが鳴り響く。

 首先。翔&咲が掛け合いをしながら踊り出し、途中で真琴が合流する“三人体制”。真琴は足首をかばいつつもしっかり動き、やはり“熱量”が段違いに上がった。咲も「先輩に負けない!」という気迫が見え、翔はコミカルと男らしさを巧みに混ぜながらリズムを刻む。
 「おお……なんか凄い!」
 見守る初心者組やシズクたちが口をそろえてつぶやく。個性の違う3人が絶妙なバランスで混じり合っていて、新鮮なインパクトがある。

 クールパートではシズクを中心に、カウントバッチリのシャープな動き。K-POPパートは真由と初心者女子が可愛く舞い踊り、ディスコパートでは翔、拓也ら男子組が華やかなノリで引っ張る。
 最後の集合ポーズまで息が途切れず、全体の一体感を感じられる仕上がりだ。踊り終わるとスタジオは拍手と笑い、そして達成感に包まれた。

 「すごい、だいぶ完成度上がったね!」
 私が興奮気味に言うと、真由が「これで本番の音響と照明が合えば最高だよね……」と期待を込めた声を出す。シズクは「細かいズレはあるけど、合宿前に比べたら見違えるほど」と冷静に評価。初心者組はハイタッチし合い、翔は汗を拭きながら「ひっさびさにこんなに踊った!」と笑っている。

 そして、真琴は少しばかり息を切らしながらも、「足、痛みはちょっとあるけど、踊れるレベルだ。あとは本番までにどれだけ慣れるかだな……」とほっとした表情を見せた。


8. トラブルの種、足りないステージ裏スタッフ?

 全体通し練習の後、ふとRica Aoyama先輩から連絡が入る。「ステージ裏で人手が足りないらしく、運営スタッフをサークルから一人出してほしい、と実行委員会が言ってる」とのこと。
「えー、出演者なのに裏方スタッフまでやらなきゃいけないの?」
 私が困惑していると、先輩は申し訳なさそうに声を落とす。
「ステージ出演団体が多すぎて、裏方が回らなくなってるんだって。よかったらサークル内で誰か手が空いてる人いないかな……?」

 しかし、うちはロック・クール・K-POP・ディスコとほぼ全メンバーが出演するし、初心者組も含めて踊らない人がいない。ただ、OBやOGが手伝いに来てくれるわけでもなく、難しい状況だ。
「どうしよう……せっかく通し練習がうまくいったのに、裏方の人手が足りないからなんて理由でステージの準備に支障が出るのは嫌だし」
 私は悩みつつも、一旦サークルLINEで事情を説明し、誰か協力できる人を募ることにした。すると、意外なことにが名乗りをあげた。

咲:私、ロックパートと他のパートの間には休憩時間あるし、出番の合間なら少しだけ裏方に回ることもできるかもです!
小春:え、大丈夫? せっかく初心者組センターやってるのに負担じゃない?
咲:いえ、ステージを成功させたい気持ちは同じなので……何とか頑張ります!

 頼もしさに感動する反面、彼女に負担をかけすぎかも、と心配もある。しかし現実的に“踊らない人”がいない以上、咲の申し出を受けるしかないかもしれない。


後記

 こうして、いろいろな問題が浮上しつつも、ロックパートの三人体制のメドレーはほぼ形になり、サークル内のムードは最高潮に近い。足首を回復させた真琴が再びエースの輝きを放ち始め、翔・咲との化学反応で新しいロックパートが誕生した。初心者組やディスコパートも負けじと気合十分。

 しかし、まだ実際のステージでのリハーサル時間は短いまま、裏方スタッフも不足気味でトラブルが起こるかもしれない。衣装や照明が万全に機能するかも不透明だ。
 何より、1か月前は足首を痛めていた真琴が本当に本番でフルパワーを出せるかどうか――ギリギリまでわからない。本人がどこまで頑張るのか、そして周りがどうフォローするのか。期待と不安が入り混じり、メンバーそれぞれの想いが高まっていく。

 文化祭まで、あと10日。
 最終的な形がようやく見え始めたとはいえ、何が起こるかわからないのがステージの怖さでもある。私はリーダーとして、最後まで気を抜かずに仲間を見守り、調整し、そして自分自身も踊りの完成度を上げる必要がある。
「もう、一人で全部なんて抱えきれないよ……でも、みんながいるから大丈夫、きっと!」
 そう自分に言い聞かせつつ、あふれる不安を抱えながらも、私は踏み出す。ステージに近づくための残り10日、最高のステップを刻むために――。

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