第七章①:給食室が消えた理由

1. 異変の予感

六つ目の不思議を解決したソレナトリオ(レオ、ナオキ、ソウタ)は、鏡の世界での長い冒険にいよいよ終わりが近づいているのではないか、という期待を抱き始めていた。
夜の音楽室から始まり、動き出す人体模型、消える図書室の本、終わらない階段、赤い傘の少女、理科室の声――どれも常識ではあり得ない出来事だったが、三人は絆を深めながら次々と謎を乗り越えてきた。
「あと一つ……七つ目を乗り越えれば元の世界に帰れるかな」
ソウタがそう呟くたび、ナオキは「いや、まだ“八つ目”っていう話もあるし油断はできない」と慎重な姿勢を崩さない。レオは「ま、どっちにしてもあと少しだ」と笑みを見せる。誰もが疲労は隠せないものの、これまでの経験が自信を与えていたのも事実だ。

そんな矢先、“鏡の世界で給食室が忽然と消えてしまった”という噂を耳にする。もともと使われていないはずの旧給食室が、跡形もなく消えているらしい。
「給食室が丸ごと消えるなんて、本当かよ……」
レオは半ば呆れつつも興味津々。ナオキはマジックのような話に首を傾げ、ソウタは「ここまできたら何でも起こりそうだね……」と苦笑する。


2. 給食室の存在が消えた校舎

三人が向かったのは、旧給食室があるとされる校舎の一角。現実の学校では数年前まで使われていたとされるが、鏡の世界ではどうなっているのか、一度も確認できていなかった場所だ。
「おかしいな……確かにここが給食室に繋がるはずだけど、廊下が続いているだけ?」
ナオキが地図(鏡の世界用にメモした簡易図)を確認するが、そこには給食室があるはずのスペースが丸ごと消えており、通路が歪んだ形で延びているだけに見える。
ソウタは戸惑いながら周囲を照らすが、壁やドアの類も見当たらない。まるで最初から「給食室なんて存在しなかった」かのように、隙間なく空間が埋められているのだ。
「本当に消えてる……建物ごと無かったことになってるのかもしれない」
レオが溜め息交じりにつぶやき、ナオキは「これが七つ目の不思議か」と身構える。ソウタは不可解すぎる光景に、頭が追いつかないようで怯えた眼差しを浮かべた。


3. 噂に伝わる“消えた給食室”

実は以前から、鏡の世界の生徒たちの間では、“消えた給食室”の噂が囁かれていたという。そこでは、かつて大きなトラブルがあったらしく、その影響で給食室は閉鎖され、鏡の世界からも消えてしまった――という流れらしい。
「トラブルって、どんなことがあったんだろうね」
ソウタが首をかしげる。給食室関連の思い出といえば、楽しい給食時間や時々の珍事件くらいしか思い浮かばないが、噂では相当深刻な出来事が起きたらしい。
ナオキは過去の不思議でも“想い”や“未練”が大きな要素だったことを踏まえ、「ここにも強い感情が絡んでいそうだ」と推測する。レオは「どっちにしても、なぜ給食室が丸ごと消えるんだよ」と釈然としない様子だ。


4. 手がかりを探しに

「こんなところで立ち止まってても仕方ない。まずは給食室に繋がるはずの廊下を調べてみるか」
レオが意を決して、壁をノックしたり床を叩いてみたりと、隠し扉や隠し通路がないか探す。ナオキは懐中電灯を使いながら、壁際の材質やヒビを検分し、ソウタはほんのわずかな違和感を見逃さないよう目を凝らす。
すると、少し奥まった位置に不自然な膨らみがあることに気づく。鏡の世界の歪みなのか、元は扉だった痕跡が埋め込まれているようにも見える。
「ここ、ドアがあったんじゃないかな……」
ソウタが指を差すと、ナオキは手で触れながら「微妙に木目が違う。もしかしたら、給食室への扉が鏡の世界では消えてるのかも……」と理解する。レオは「こじ開ければ入れるか?」と半ば力技の可能性を考えるが、下手に壊せば危険だ。


5. 懐かしさと想い

学校生活の中でも、給食は多くの思い出やトラブルが詰まった場所だ。ソウタは静かに回想する。友だちと大騒ぎしながら食べたり、時には嫌いな食材を残して先生に叱られたり。そんな当たり前の光景が、この鏡の世界では“無かったこと”になっているようで、寂しさを覚える。
「給食室にいた誰かの想いが強かったのか……あるいは、嫌な思い出が消えてしまう原因になったとか……?」
ナオキが推測すると、レオは「つまり、給食室がなくなったのは“負の感情”か何かかもな」と同意する。これまでの七不思議も、悲しみや後悔などが反映されて具現化していたケースが多い。


6. 六つ目の教訓を活かす

ちょうど先日、理科室の“声”を助けるために三人が行動し、“封印された想い”を解放したばかりだ。ナオキはあのときの経験を思い出しながら、「今回も、誰かの強い意志や感情を解きほぐさないと、給食室は戻らないのかもしれない」と指摘する。
「ってことは、また誰かの心残りか……」
レオはため息をつきながらも、いつものように前向きな姿勢を崩さない。ソウタは少しだけ笑みを浮かべ、「きっと俺たちになら、また解決できるよ」と力強く言う。
七つ目の不思議――“給食室が消えた理由”はどうやら過去の記憶や感情が大きく絡んでいるようだ。

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