1. 階段の先に見えた扉
“終わらない階段”を突破する糸口をつかんだソレナトリオ(レオ、ナオキ、ソウタ)は、踊り場に新たに現れた小さな扉を発見する。鏡の世界で初めて見る扉らしく、埃と薄暗い光の奥でかすかに浮かび上がっているように見える。
「ほんとに出口かな……?」
ソウタが躊躇して足を止めるが、レオは扉の前に進み出て手をかける。ナオキは懐中電灯を当てながら、周囲の状況を細かく観察。鏡の世界ならではの危険を想定しているが、ここまで来て引き下がるわけにはいかない。
「行くぞ、俺たちなら大丈夫だ」
小さな声でレオが宣言し、三人は一斉に「それな!」と声を合わせる。まるで合図されたかのように、扉がギギッと音を立てて開き、微かな光が踊り場を照らした。
2. 迷路の終わりと静寂
扉の向こう側は、さほど大きくない踊り場の延長線のようなスペースだった。ただし、これまでの暗鬱な雰囲気が少し和らいでいる。廊下の奥には、鏡の世界にも関わらず、どこか懐かしい空気が漂っている感じがする。
「階段……終わったのかな」
ソウタは足元を確認する。そこには朽ちた木の踏板ではなく、床のタイルが敷かれた平面が広がっていた。どうやら階段の迷路を抜け、新たなフロアに到達できたらしい。
ナオキはあちこちを照らし、「このフロアはどうなってるんだ……」と戸惑う。校舎の構造とも微妙に違うが、少なくとも“延々と繰り返す踊り場”からは解放されたようだ。レオもほっと息をつき、「よし、ようやく出られたな」と安堵の笑みを浮かべる。
3. 振り返る「終わらない階段」
扉を振り返ると、先ほどまで苦しめられた階段の踊り場が闇の中に沈んでいるかのように見える。マークをつけた壁や上り下りした段差……そのすべてが、今となってはうっすらした記憶になりつつある。
「やっぱり、最初は本当に同じ踊り場を回ってると思ってたけど、似たような踊り場が続いてただけだったんだな」
ナオキが静かに整理し、レオは鼻を鳴らして笑う。「あのメモにあったとおり、三人が気持ちを合わせることで“道が開く”ってのが決め手になった。いかにも鏡の世界らしい感じだよな」
ソウタは小さく「終わらなくてよかった……」と呟きながら、足が震えるのを落ち着かせる。怖さと同時に、チームワークで抜け出せた達成感が胸を満たしていた。
4. 四つ目の不思議、解決の証
この瞬間、三人の胸には確信が芽生える。**“終わらない階段”**という謎が解け、無限ループから脱出したのだから、四つ目の不思議は突破したも同然だ。これまでも、鏡の世界の不思議は“物理的な理由”だけでなく、“三人の絆”や“それな”の合言葉が絡んで解決へ導かれてきた。今回もそれが大きかった。
「また一つ、越えたな」
レオが笑顔で言い、ナオキは周りを見回しながら「先は長いけど、少しずつ進んでる」と返事する。ソウタは心底安心した様子で、「次は何が待ってるのかな……」と不安と期待の入り混じった表情を浮かべている。
5. 次なる一歩へ
四つ目の不思議を解決したことで、七不思議の半分以上を乗り越えたことになる。ソレナトリオは疲労を隠し切れないが、同時に大きな自信を得た。夜の音楽室、理科室の人体模型、図書室の消える本、そして今の“終わらない階段”……それらを乗り越えた事実は、三人の絆をさらに強固にしてくれた。
「よし、先に進もう。きっと次の不思議が待ってるはずだ」
レオが力強く言うと、ナオキとソウタも小さく笑って頷いた。鏡の世界の先にある謎を解き明かして、元の世界に帰るため、彼らはまた足を踏み出す。
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