【第6話】ステップ・バイ・ステージ!~私がダンスサークルのリーダーになるなんて!?~

第6話「初心者大作戦とドタバタ個人面談!」

新たな課題「初心者組をどうする?」

 月曜日の夕方。私はサークル室で再び頭を抱えていた。
 初心者組――ダンス未経験者や、まだ基礎が身についていないメンバーたち――が、全体練習についていけないという声が浮上し始めたのだ。文化祭のステージにはサークル全員が出る予定なので、彼らを置いてけぼりにするわけにはいかない。だけど、時間は限られているし、振り付け作りも進めなければならない。

 そんな悩みを抱えたまま、私はリカ先輩に相談してみることにした。先輩は就活で忙しい中でも、時々サークル室に顔を出してくれる頼れる存在だ。
「初心者組へのフォローが追いつかなくて……全体練習のたびに、“自分だけ置いていかれる”って感じてる人がいるみたいなんです」
 私が弱音を吐くと、先輩は机に肘をついて考え込むような仕草をした。
「うーん、それは確かに難しいよね。でも小春、全員を一気に引っ張ろうとしすぎてない?」
「え?」
「リーダーだからって、全部を一人でやろうとするのは無理だよ。まずは初心者組の気持ちをちゃんと聞いてみるとか、何かできる範囲でやれることを探したらどう?」
 先輩の言葉にハッとする。そういえば、初心者組の人たちと個別に話したことはあまりなかったかも……。全体練習の中で「大丈夫?」と声をかけるくらいで、具体的に何が困っているのか、どうしたいのかを聞く場面は作れていない。

「そうか……まずは直接話してみないと、何が問題かわからないですよね」
 そう気づいた私は、初心者組のメンバーと個人面談をすることに決めた。とはいえ、いきなり「話そう」と言っても緊張させちゃうかもしれないし……どうしよう?

個人面談作戦、スタート!

 翌日の練習後、私は初心者組の数人に声をかけてみた。
「えっと、最近の練習で何か気になることとか、困ってることってないかな? 少しだけ話を聞きたいんだけど……」
 すると、一人の女の子が手を挙げた。彼女の名前は中村 咲(なかむら さき)。文化祭のステージには憧れているけれど、ダンス経験はほとんどないと言っていた子だ。
「あの……正直、みんなの動きについていくのがすごく大変で……」
「そっか。咲ちゃん、どのあたりが難しいって感じる?」
 私がそう聞くと、咲ちゃんは少し恥ずかしそうにうつむきながら、ぽつぽつ話し始めた。
「カウントを数えながら動くのが苦手で……それに、フォーメーションが複雑で……自分だけズレちゃったらどうしようって不安で……」

 なるほど。私たち経験者にとって当たり前になっている“カウントを意識する”とか“フォーメーションを把握する”という基本が、初心者にはハードルが高いのだ。

 さらに、別の初心者組のメンバー――**佐々木 拓也(ささき たくや)**が「俺、正直ステップが全然覚えられなくて……振り付けが変わるたびにテンパっちゃう」と正直に打ち明けてくれた。彼は男子メンバーの中では真面目そうなタイプだけど、普段あまり目立たない存在だったので、意見を聞けて少し驚いた。

「咲ちゃんも拓也くんも、ちゃんと話してくれてありがとう! それなら、基礎ステップだけを練習する時間を作るのはどうかな? みんなで一緒にやると安心するかもしれないし……」
 二人は少しホッとした表情でうなずいてくれた。

ドタバタ面談と、予想外のハプニング

 その後も何人かと話をしていると、初心者組の意見はさまざまだった。
「練習についていけなくても、誰も怒らないから安心したい」とか、
「もっと先輩が一緒に教えてくれると助かる」とか、
「基礎練だけでなく、本番の振り付けも細かく分けてやってほしい」といった意見が続出。

 ただ、中には「正直、ダンスより飲み会が楽しみ」とか、「本番のステージはそんなに目立たなくていい」などの脱力系の声も混じっていて、思わず笑ってしまった。

 個人面談中の小さなハプニングもあった。たとえば――
・真琴がいきなり乱入してきて「アタシも話聞いていい?」と大声で騒ぎ、初心者たちをビックリさせる。
・翔が「これ差し入れね~」と唐突にお菓子を配り、なぜかその場がプチパーティ状態になる。
・真由が「あ、衣装案のアンケートもついでに取っちゃおうかな!」と乗り込んできて、完全にテーマがブレる。

 ……といった具合に、個人面談の場はまさにドタバタ青春コメディの縮図と化していた。

解決策を模索してみた結果

 初心者組の声を聞いた結果、私はいくつかの具体的な対策を考えることにした。

  1. 基礎練習専用の時間を確保する
     - 全体練習の前後に、初心者組が基礎練だけを重点的に練習できる時間を作る。
     - この時間には、私や真由、シズクがなるべくサポートに回る。
  2. フォーメーション練習を分割する
     - 初心者組と経験者で分けて練習する時間を設ける。初心者組が慣れるまでフォローする。
     - 本番直前に全員で合わせることで、最終調整をする流れを作る。
  3. 初心者組専用の動画を作る
     - 翔が「動画編集なら得意!」と名乗り出てくれたため、振り付けやステップの解説動画をスマホで撮影し、初心者組が自主練習でも使えるようにする。

「これなら、初心者組も安心して練習できるんじゃないかな……?」
 私が考えた案を全体LINEグループに共有すると、初心者組から「助かります!」という声が届き、ほっと胸をなでおろす。リーダーとして少しは役に立てた気がする。

合宿の話が浮上!?

 そんな中、翔が突然「そういえば、みんなで合宿とかしない?」と言い出した。
「合宿? なんで急に?」
「いや、文化祭まであと2か月切ったし、そろそろ本腰入れて集中練習したほうがいいんじゃね? 泊まりでガッツリやれば、初心者組もぐっと成長するかもしれないし!」
 確かに、一理ある。大学サークルでは夏合宿や文化祭前の集中合宿をやるところも多い。初心者組も経験者も一緒に練習できる時間があれば、フォーメーションも整えやすくなるだろう。

 ただし、問題は費用やスケジュールだ。泊まりとなると費用がかかるし、バイトや授業の調整も必要になる。
「でも……合宿かぁ、楽しそうだよね」
 真琴はノリノリで賛成し、真由は「衣装の最終チェックとかもできそう」と前向きだ。シズクは「練習時間が増えるのは助かるけど、現実的に計画を立てられる?」と冷静に突っ込む。

 翔が手を挙げて「じゃあ、俺が宿とか交通のリサーチしてみる!」と申し出てくれたので、とりあえず案として進めることになった。

エピローグ

 こうして初心者組のフォロー案が少しずつ形になり、さらには合宿という新たなアイデアも浮上した。リーダーとしての仕事はますます増えたけれど、それでも私は少しずつ前に進んでいる実感がある。

「リーダーって、いろいろ大変だけど……みんなで一緒に頑張れるのが嬉しい」
 文化祭本番に向けて、初心者も経験者も力を合わせるために、私はさらに頑張ろうと心に決めた。

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