1. 書棚に戻された本のあと
ソウタが読み聞かせた本「たからものの森」を、元の棚にそっと戻したソレナトリオ(レオ、ナオキ、ソウタ)。磨り減った表紙や破れかけたページは、まだ傷んだままではあるものの、完全に消える寸前だった姿からは大きく回復したように見える。
穏やかな空気が図書室を包み込み、三人はしばらく無言のまま佇んでいた。この鏡の世界で、本たちは誰かに読まれることを渇望していたのかもしれない──そんな感覚が、三人の胸にこみ上げていた。
2. 図書室に漂う静かな感謝
それまで不穏に感じられた図書室の空気が、少しだけ柔らかくなったようだった。闇の奥から感じられた威圧感のようなものは消え、代わりに淡い光が書棚の合間を照らしている気さえする。
レオは懐中電灯を消し、棚に指先を滑らせてみる。以前は埃の厚みが嫌に生々しかったが、いまはほんの少しだけ、空気が澄んだと感じた。ナオキも「消えていった本が、これで少しは戻るのかも」と小声で言い、ソウタは「ほかの本も読んであげれば……きっとね」と微笑んだ。
「でも、これで“本が消える理由”は大体わかったのかな」
レオが振り返ると、ナオキはうなずき、「結局、鏡の世界のルールってのは“想い”によって左右されてるってことなんだろうな」とため息交じりにつぶやく。
3. 三人の成長と絆
ここで三人は互いの顔を見合わせ、改めて自分たちが乗り越えてきた七不思議を思い返す。夜の音楽室、理科室の人体模型、そして図書室の消える本──どれもが物や空間に宿る“想い”や“意志”が絡んでいるように見える。
ナオキは「あれだけ理詰めだった自分が、この世界で“想い”を信じるようになるなんてな……」と苦笑する。レオは「まあ、結果オーライだろ」と笑い、ソウタは「読んであげてよかった……」と胸を撫で下ろした。
特にソウタは、優しい性格の反面、流されがちな自分に劣等感を抱いていた。しかし、今回“本の気持ち”に寄り添い、読み聞かせを実行することで、不思議を解決する手助けができたことが自信につながっていた。
4. 次なるステージへ
「これで“第三の不思議”は……クリアでいいのかな?」
ソウタが恐る恐る問いかけると、レオはハッキリと力強く答える。
「当たり前だろ。もう本は消えかからなくなったし、ここの空気も変わったじゃんか」
ナオキも「まだ全部の本が戻ったか確認は必要だけど……“消える理由”は解明できたし、“これ以上消えないようにする”方向性は見えた」と賛同する。
図書室の奥には、まだ散らばった破れた本の残骸があり、完全な解決かどうかは未知数だ。しかし、物語を読み、想いを受け止めることで“救える”可能性を見出したのは大きな前進だろう。
5. 「それな!」で次の一歩
三つ目の不思議を解決したことで、鏡の世界に囚われていた一つの謎が晴れた。いつもの合言葉「それな!」を交わし、三人は図書室から離れる決意をする。まだあと四つ(+隠された“八つ目”)の謎が残っており、先は長い。
「でも、なんか感触はつかめたよな。結局“想い”とか“気持ち”がこの世界を動かしてるってことかも」
レオが自信ありげに言うと、ナオキは半ば呆れつつも「ああ、否定はできないな……」と苦笑する。ソウタはほっと安堵の笑みを浮かべながら、「本を読んであげるなんて、普通の世界でも大事なことだよね」としみじみつぶやいた。
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