[Episode 5] Pas à pas ! ~ Je n'arrive pas à croire que je vais être le chef d'un cercle de danse ! ~.

第5話「ロックパートの難航と、止まらない衣装計画」

真琴のロックパートが仕上がらない!

 「やばい……全然ハマらない……!」
 サークル室に響くのは、佐藤 真琴(さとう まこと)の珍しく弱気な声。いつも元気全開の彼女だが、今日はかなり落ち込んでいる。

 机の上にはメモ帳とスマホが広げられていて、スマホからは邦楽ロックの力強いサビが流れていた。私たちはメドレーの一環として、このロック曲を踊ることに決めている。もちろん、振り付け担当は「ロックで燃えたい!」と強く推した真琴自身。

 しかし、実際に振り付けを考えてみると、なかなかイメージ通りにいかないらしい。
「うーん、ロックっぽくアグレッシブに踊りたいんだけど、どうしてもダサくなるんだよな……ギターのリフに合わせて腕を振ってみても、単なる“ヘドバン”だけじゃダンスって感じじゃないし……」
 真琴は頭を抱えながら、指で机をリズムよく叩いている。体育会系ノリでパワフルなのが彼女の魅力だけれど、細かい振り付けを作るのは初めてのようだ。

 私、**桜井 小春(さくらい こはる)**はそんな真琴の隣で、彼女のメモ帳をのぞき込んでいた。そこには「イントロ:腕の動き×2」「サビ前でターン!?」「ジャンプ→着地でフォーメーション移動?」といった書き込みがあるものの、ほとんど矢印と大きな丸印が散らばっているだけ。どうやらイメージが固まらず迷走中らしい。
「真琴なら、もっと勢い任せで作れると思ってたけど……やっぱり難しい?」
 私が問いかけると、真琴は「いや……アタシは“勢いだけ”じゃダメだってわかってるからこそ苦戦してるんだよ」と珍しく弱気な表情を浮かべた。
「カッコよく見せたいのに、実際やってみるとバタバタしてまとまりがないんだよな……」

 そこへ背後からひょっこり顔を出したのが、Miyata, Shizuku.。クールな表情で、おなじみの低めの声を発する。
「私も最初は“ロック×ダンス”ってどうなるの?と思ったけど、曲に合わせたステップを分析すれば、そんなに難しくないと思うけど」
「じゃあ手伝ってくれよ、シズク……」
 真琴が弱々しく助けを求めると、シズクは少し困ったように眉をひそめる。
「私の担当は洋楽クールパートで精一杯だし、全体の合わせも指摘しなきゃならないし……。でもまぁ、できる範囲でアドバイスくらいならいいわよ」
「ありがてぇ……」

 こうして、ロックパートは真琴を中心にシズクもサポートする流れに。だが、すでに真琴が作りかけている“パワフルで熱い動き”に、シズクのミリ単位でカウントを合わせる精密さがどこまで融合できるのか――正直、やや不安はある。

真由の衣装計画が止まらない!?

 一方、そのサークル室の端では、鈴木 真由(すずき まゆ)が大きなファッション雑誌を広げ、何やら新たな衣装案を練り込んでいた。
「ねぇ、文化祭ステージってさ、衣装を何回もチェンジできないじゃん? でもメドレーの曲ごとに雰囲気変えたいよね? どうしよう……!」
 真由は雑誌をペラペラめくりながら、メモ帳にイラストを描き込んでいるようだ。「曲ごとにベースとなる黒Tシャツは同じまま、小物でアレンジを変える作戦」とか、「ヘアアクセを使い分けて雰囲気ガラッと変える」など、アイデア自体は悪くない。
 しかし、問題はコスト
手間C'est le cas.
「一人ひとりが違う小物を用意したら、絶対ごちゃごちゃにならない? しかも本番で衣装パーツを落としたりしたら悲惨じゃん」
 私が恐る恐る声をかけると、真由は「うーん、確かにそこは悩みどころ……でも魅せ方は大事だしねぇ」と頬杖をつく。
「じゃあ曲のジャンルごとに色で統一とか? 赤いスカーフを巻くパート、シルバー系のバンダナをつけるパート、とか……」
「おもしろそうだけど、練習でも使わないと馴染まないよね。小物がズレたり落ちたりしたら危ないし」
「それでも、観客目線では衣装に変化があったほうが楽しいと思うんだけど……」

 真由は明らかに衣装のこだわりが強い。K-POPパートの担当として、振り付けだけでなく“見せ方”も自分でコントロールしたい様子。
 そこにふらりと現れたのが、Sho Ohtani.。彼はお調子者だけど、雑務を頼めば意外と動いてくれる便利な男でもある。
「おれ、バイト先の先輩に聞いたんだけど、ネットで安く買える小物があるみたいよ。まとめ買いで揃えればコストも抑えられるって」
「おお、いい情報! そしたら小物を全員分統一できるかも……やっぱり色分けする? それともパート分けして……」
 真由の目はキラキラ輝きだす。翔は「すごい勢いだな……」と圧倒されつつも、スマホを操作しながらネットショップを見せてくれている。

 私はその横で「助かるけど、またあれこれ試してたら練習時間が足りなくならないかな……」と少しハラハラ。衣装の暴走が始まる予感がしてならない。

リーダー小春、状況整理に奔走する

 メンバーがそれぞれ奔放に動き始めたことで、私は再び「まとめ役」に駆り出されることになった。
 真琴のロックパートはシズクと組んで練習しそうだし、真由と翔は衣装案の調達プランを練っている。ならば私もサークル全体のスケジュールを把握しつつ、トラブル防止のために動かなくちゃ。

 (1)ロックパートの仕上がり問題
 - 真琴の身体能力を活かす振り付けにしたいけれど、空回りしていないか?
 - シズクが手伝うことでどんなふうに仕上がるのか、こまめにチェックしたい。

 (2)衣装&小物の暴走問題
 - 真由&翔のアイデアが飛躍しすぎないよう、コストや安全面、練習時間を考慮する必要がある。
 - 部員全員のサイズや好みに対応できるのか?

 (3)他の振り付けパートとの整合性
 - メドレー構成は順調だけど、各パートがバラバラの雰囲気になりすぎると全体がちぐはぐに見えてしまう。
 - 私は「つなぎ」の演出プランを担当しているので、随時振り付けの進捗を確認しないと。

 こんなふうに、やるべきことが山積みで頭が回りきらない。でも、ちょっと前の私は「無理かも……」と逃げ腰だったところ、今は「どうにかして折り合いをつけよう」と前向きに考えているから不思議だ。
「リーダーなんだから、ここで踏ん張らないとね……!」
 そう自分に言い聞かせて、私は再びメモ帳にペンを走らせる。

真琴のロックパート、練習風景

 そんなある日、私は真琴とシズクが使っている練習スタジオを覗きに行った。大学の学生会館には複数の練習スペースがあり、空き時間を見計らって予約すれば使えるようになっている。
 ドアをそっと開けると、そこには激しいギターリフと、真琴の全力ムーブが。
「よし、ここで腕を振り下ろして、ジャンプして……」
 真琴は汗だくになりながら、ロックのノリを全開に表現しようとしている。しかし、正直なところ、ダンスというより「バンドのライブで盛り上がるファンの動き」に近い印象。勢いはあるのだけれど、ステージ上でフォーメーションを組むにはやや雑な感じだ。
 対してシズクは、音楽に合わせてカウントを刻みながら、冷静に指摘を入れている。
「そのジャンプ、着地のリズムが半拍ずれてる。ここでターン入れたらどう? あと、曲が速いからこそ、細かいステップを入れて躍動感を出したほうがいいんじゃない?」
「なるほど……よし、もう一回やってみる!」

 音楽を巻き戻して再生し、真琴が腕を大きく振り下ろしてターンに入る。たしかにカッコよくなった。勢いだけじゃなく、少し計算された動きになっている。
「おおー、なんか良くなった気がする!」
 真琴は嬉しそうに声を張り上げるが、途中でバランスを崩し、またしてもぐらりとよろける。危ない……と思ったら、シズクがさっと手を貸して支えた。
「ありがと、シズク……」
「ふふ、勢いありすぎるんだから。もう少し加減しないとね」
 二人が顔を見合わせて苦笑する姿を見て、私は少し安心する。衝突しがちだった真琴とシズクが、なんだかいい感じに協力し合っている。これは大きな成長かも。

 私はスタジオの端で拍手しながら声をかける。
「すごいね、二人とも。良い感じに仕上がってきたんじゃない? 私から見たら、全然ダサくないよ!」
「ほんとに? ……よかったぁ」
 真琴は照れくさそうに頭をかく。シズクも「まだまだ細かい調整が必要だけど、方向性はいいと思う」とうなずく。

衣装案、エスカレートの予感

 ロックパートが一歩前進して一安心……かと思いきや、次の問題は衣装チームからやってくる。真由&翔のタッグだ。
 翌日、サークル室に入ると、二人はやたらとテンション高くスマホ画面を見せ合っていた。
「見て見て、ネットショップでこんなバンダナ見つけたの!」
「おれはこっちのLED手袋が面白そうだと思うんだけど……」
「LED手袋!? なにそれ、SFチックでダンスって感じしない?」
「だって暗転中に手が光ったらめっちゃカッコいいじゃん!」

 私は目を丸くして「LED手袋?」を連呼してしまう。真由が興奮ぎみに説明する。
「これを使えば、照明が落ちても手先だけ光るから、それこそクールな演出ができるんじゃないかって! でも……みんなで揃えるとなると結構な出費になるよ?」
「そ、それはちょっと……コスト面が大丈夫なのかな?」
 私が戸惑っていると、翔は「まとめ買いすれば割引あるし、バイト増やせば何とか……」と妙に乗り気。でも、サークル全員に負担を強いるのは避けたいし、リカ先輩や他のメンバーの意見もあるだろう。

 そこへ真琴がフラッと入ってきて、二人の話を聞いて吹き出した。
「ははは! LED手袋? そんなんで踊れるの? 想像するだけでウケるんだけど!」
「ちょっとバカにしないでよ~。面白いでしょ?」
「面白いけど、曲に合わないんじゃない? ロック曲で手が光るとか意味不明だし」
 真琴の正論ともいえるツッコミに、翔は「いや、ディスコパートで使えば合うかも!」と反論。真由も「K-POPパートでも夜っぽい演出になるならアリ!」と乗っかる。すると今度はシズクが「クールパートにLED? うーん、ちょっと違うような……」と微妙な顔をする。
 一瞬で再び大混乱が生まれる。コメディ的には最高だけど、リーダーとしては頭が痛い。

小春のまとめ方

 結局、LED手袋に関しては「とりあえず保留」ということになった。理由はコストと曲の雰囲気に合うかどうかが不明瞭だから。真琴やシズクの懸念も考慮すると、すべてのパートで使うのは難しそうだ。真由は少し残念そうだけど、「まぁ、まだ可能性はゼロじゃないよね?」と希望を捨てていない。翔は「うん、いつか使おう!」とめげない。この勢い、どこかで暴走しないといいけど……。

 ただ、バンダナなどの小物で色分けする案は、ある程度みんなも納得してくれた。

  • ロックパートは赤や黒など“熱い”色をベースに。
  • K-POPパートは白やピンクなど“可愛い”色を差し込む。
  • ディスコパートは派手めの色(シルバーやゴールド?)を試す。
  • クールパートはモノトーン系でシンプルに。

 私がまとめとしてサークル全員に「小物購入の希望はどれくらい?」とアンケートをとり、最終的に全体練習で試してみたうえで決定する方針にする。こういう段取りもリーダーの仕事だ。やっぱり人数が多いと一気に意見を集めないと混乱しちゃう。
「よし、まずは土曜日の全体練習で各パートの振り付けを軽くお披露目して、衣装のイメージも合わせて説明しよう!」
 私がそう宣言すると、真琴は「オッケー、ロックパートはほぼ形になってきたし!」と意気込み、真由も「小物のサンプル持っていくね!」と張り切る。翔は「ネット注文前に実物を試したいしな」と同意。シズクは「立ち位置の細かい調整もできるといいわね」と冷静に付け加える。

 ――こうして、ロックパートの難航と衣装の暴走は一旦落ち着いたかに見えた。

新たな衝突の火種?

 しかし、私の予感は当たってしまう。新たな衝突の火種は、意外なところから出てきた。
 土曜日の全体練習に向けて、メンバーがそれぞれ振り付けや衣装アイデアを準備している中、「初心者組も一緒に練習できるか?」というスケジュール問題が浮上したのだ。
 真由やシズクが初心者サポートも兼ねていたが、最近は自分のパート作りに集中していたため、初心者組へのフォローが十分でない。「振りについていけない!」という声が出始めているらしい。
「基礎練習の日に初心者を見てあげたいけど、ロックパートの仕上げもしなきゃだし、時間が足りない……」
 真琴が頭を抱えれば、シズクは「忙しくてどうしようもない」と肩をすくめる。真由も「やばい……振り付け案をまとめるだけでいっぱいいっぱい……」と泣きそうだ。
 初心者組は10人ほどいて、全員が全くの未経験というわけではないが、まだカウント取りやステップに慣れていない人も多い。文化祭ステージは全サークルメンバーで出る予定なので、初心者組がフォーメーションに混ざったときに遅れを取ると、全体の完成度に影響が出てしまう。
 私が考えた「分担作戦」だけでは、もう限界が近いのかもしれない。

 日程表を広げたまま、私は現実問題として「どうすれば初心者組をフォローできるか」を必死に考える。限られた時間と労力の中で、パートごとの振り付け作りと初心者指導をどう両立するか……。
「んー……また何か策を考えなきゃ……」

épilogue

 こうして、ロックパートの問題や衣装案の暴走は一段落したものの、新たに「初心者組への指導」が大きな課題として浮上してきた。私はリーダーとして、またしても苦労の連続だ。
 とはいえ、メンバー一人ひとりが少しずつ前向きに動いているのも確か。真琴とシズクは衝突しながらも協力し、真由と翔は面白い衣装プランを考えようと盛り上がっている。
「これも青春のドタバタってやつなのかな……」
 そう思いながら私は、改めてタスクの優先順位をメモにまとめる。次なる全体練習での“お披露目”が成功するかどうかは、私がどれだけうまく調整できるかにかかっている。
「よーし、今度は初心者組をどう巻き込むか……もうひと踏ん張り、がんばろう!」

 まだ道のりは長いし、トラブルも山積み。でも、みんなで最高のステージを目指す――その思いがある限り、私たちは止まらない。こうしてドタバタ青春コメディは、次のステップへと進むのだった。

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