1. 戻った給食室、漂う違和感
七つ目の不思議“消えた給食室”を取り戻しつつあるソレナトリオ(レオ、ナオキ、ソウタ)は、先ほどまで跡形もなかった給食室の扉が復活し、室内の設備がうっすら姿を現していることを確認した。
カレーの皿を手に、三人は配膳台や厨房の様子を懐中電灯で照らす。まだ完全にクリアな形ではないが、調理台や棚が所在なげに浮かび上がり、どこか昔のにぎわいを思い出させる。ただし、空気が重く冷たいままで、安心感には程遠い雰囲気だ。
「給食を再現して、部屋は戻ったけど……なんか不気味だな」
レオがつぶやき、ソウタは身震いしながら「誰かがここにいる気がする……」と不安げに言う。ナオキは眼鏡の奥で目を細め、「まさか、これが“八つ目”の正体か……?」と喉を鳴らした。
2. 溶けかけた風景と、黒い影
少しずつ進んでいくと、給食室の奥の壁がまだ半透明のままで、現実感が乏しいように感じられる。鏡の世界が完全に修復されていない状態のようだ。
しかし、その壁際にかすかな黒い影が揺れているのがわかった。ナオキが「何かいるぞ……」と警戒し、レオは懐中電灯を当てようとするが、光が弾かれるようにして形をはっきりと映し出さない。ソウタは息を呑み、「これって八つ目……?」と声を落とす。
黒い影はまるで闇そのものが凝縮されたかのようで、視線を投げかけるほどに違和感を増していく。すうっと沈み込むように壁に馴染んだかと思えば、ふわりと浮かぶように揺れて姿を変える。これまでの不思議とも違う、不安定で得体の知れない存在感に、三人は息を詰めたまま立ち尽くす。
3. 七つ目を越えた瞬間、八つ目が顕現
「やっぱり……七つ目の不思議が解き明かされた瞬間、八つ目が動き出すって噂、マジだったんだな」
レオが苦々しく唇を噛みながら言う。ナオキは「ここまでが序章かよ……」と頭を抱えるが、現実と鏡の世界双方で“八つ目”の存在が囁かれていた以上、これを避けては通れない。
ソウタは黒い影に近づけず、不安そうに後ずさりする。「この影、何なの? 人の形でもないし、話しかけても意味ないよね……?」
ところが、影は微かに揺れながら、三人を観察するような気配を放つ。言葉にならない迫力が空気に満ち、配膳台の上の皿からはじわりと湯気が消えるほどの冷たさを感じた。
4. 給食室が招くさらなる謎
せっかく再現した給食カレーも、楽しい温もりを三人にもたらすどころか、眼前の黒い影がすべてを奪い取るような重い空気を作っている。
「まるで……この部屋に巣食ってる闇みたいだな」
ナオキは低い声で言いながら、懐中電灯の光を左右に揺らす。光の筋が影を捉えかけても、ぐにゃりと形を変えて回避するかのように逃げていく。レオは「どうすりゃ対抗できるんだ?」と焦りを募らせた。
鏡の世界で“八つ目”が何なのか、その正体はまだ見えない。ただ言えるのは、“七つ目”が解決するのを待っていたかのように、今まさに動き始めていることだ。
5. 三人の決意
一方で、給食室は完全に復活したわけではなさそうだ。消えていた理由が一部明らかになったものの、真相はまだ掴めていないし、この黒い影こそが根本的な謎を引きずり出す存在かもしれない。
「落ち着け……。まずはこれが何を意味するか、探ってみよう」
ナオキが理性的な立ち回りを探すが、鏡の世界では想いが強く作用するパターンが多い。ソウタは黒い影に対して、声をかけることすら躊躇している。レオは歯を食いしばり、「必ず何とかする」と拳を握りしめた。
三人の目には、これまでの七つの不思議を乗り越えた自信と、八つ目に対する未知の恐怖が同居している。それでも彼らは引き下がるわけにはいかない。元の世界に帰るためには、この“八つ目”の謎を解かなくてはならないからだ。
レオが力強く言うと、ナオキとソウタも小さく笑って頷いた。鏡の世界の先にある謎を解き明かして、元の世界に帰るため、彼らはまた足を踏み出す。
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