第七章③:七つ目の不思議解決、しかし…

1. 給食再現への挑戦

集めた食材や調理器具を使い、ソレナトリオ(レオ、ナオキ、ソウタ)は“消えた給食室”を取り戻すため、まずは家庭科室で仮の「給食再現」を始めようとしていた。
「よし、ここならガスコンロや流し台が使えそうだし、どうにかカレーと簡単な副菜くらいは作れそうだな」
レオが張り切ってエプロンを取り出し、ソウタは野菜の缶詰を開けながら「本当にうまくいくかな」と心配そう。それでも、過去の不思議を考えれば“実際に想いを形にする行動”が効果的だと学んできたからこそ、三人は希望を抱いて作業を始める。

一方、ナオキは食材のチェックをしながら、「腐ってないみたいだけど、こんなに古そうなのによく無事だったな」と呟く。鏡の世界特有の歪んだ時間のせいなのかもしれないが、腐敗せず形を保っているのが不思議な具合だ。


2. 3人で作るカレーライス

「給食と言えば、カレーライスは王道だろ!」
レオが張り切って鍋に油を熱し、缶詰の野菜やレトルトのルウを順番に入れていく。ナオキは最初こそ理屈をこねそうになったが、どうせ鏡の世界での料理なので細かいことは気にしないと割り切った。ソウタは不慣れな手つきで混ぜ合わせながら、「これ、うまく味が決まるかな……」と心配そうだ。

作業を進めるうちに、キッチンにはほんのりとカレーの匂いが漂いはじめる。それは懐かしく、温かい学校給食の香り――三人の顔にも自然と笑みが浮かび、思い出話を交わし始める。
「そういえば、小学◯年のとき、給食のカレーにスパゲッティが出てきて、クラス中で大騒ぎだったな」
「あったあった! あれ、先生が笑い転げてたよね」
いつものように合言葉「それな!」の掛け声は出てこないが、その代わりに自然な会話の流れに溶け込むような暖かな空気が流れている。


3. 給食室の兆候

鍋の中でカレーが完成しそうな頃、ふと家庭科室の空気が揺らぐように感じられた。ソウタが「ん?」と首をかしげると、ナオキは鋭い視線を室内に巡らせ、「この空気……なんだろう」と息を呑む。レオは、確かに何かが起きようとしている気配を感じ取っていた。

ドアから廊下へ出ると、先ほどまで存在しなかった“扉”の輪郭が薄っすらと浮かんでいるように見える。まるで、空間の奥底から形が滲み出してきたかのようだ。
「もしかして……給食室が戻りかけてる?」
ソウタが期待を込めて問いかけ、ナオキは「やっぱり、この“給食”を再現する想いが作用しているのかも」と苦笑気味にうなずく。レオは「急げ、もう少し完成させれば、部屋ごと戻ってくるかも!」と叫び、再び家庭科室へと舞い戻る。


4. 最後のスパイスと想い

カレーを仕上げる段階で、レオは皿を並べ、ナオキが副菜として簡単なサラダを盛り付け、ソウタは給食の雰囲気を出すために紙のランチマット(学校備蓄の古いもの)をセットする。それは、まさに“給食らしい給食”を作り上げる儀式のように思えた。

最後にソウタが、仕上げのスパイスを振りかけながら、「うまくいって……!」と心の中で強く願う。ナオキは「何だかんだで本格的な香りになったな」と鼻をくすぐられ、レオは「匂いは最高! 腹減ってきた!」とテンションが上がり始めた。


5. 給食室の復活……しかし

三人が仕上がったカレーを持って廊下に出ると、さっきまで薄っすらと見えていた扉が、はっきりと形を成していた。まるで「給食室」というネームプレートの跡すら浮かび上がっているようで、三人は胸を高鳴らせながら扉を開こうとする。
「おお……部屋の中がうっすら見える」
確かに、暗いながらも厨房や配膳台のような設備が朧気に映り、前まで完全に消えていた給食室が姿を取り戻したように思えた。ソウタは「やった、成功だね……?」と嬉しそうに言うが、その途端に重苦しい気配が部屋の奥から立ち込める。
「……なんか変じゃないか?」
レオが怯むように足を引くと、ナオキも寒気を覚える。空間は戻りかけているが、そこには何か不穏な気が漂っているのだ。今までは、想いが解放されれば平穏が訪れるケースが多かったのに、ここでは逆に邪悪な波動を感じるかのようだった。


6. 次なる影の予感

三人は給食室に足を踏み入れようか迷う。カレーの香りを漂わせたまま、皿を手にしたレオは「大丈夫なのか……?」と苦い顔をし、ソウタは「すぐ出てくればいいよね……?」と小声で言う。ナオキは懐中電灯を握り締め、「慎重に行こう」と呼びかける。
扉を少し開くと、埃と冷たい風が吹き込み、配膳台の上に薄暗い影が揺れる。まるで“給食室が戻った”という事実と同時に、別の何かが動き出そうとしているように見えた。
「これ、もしかして“八つ目”ってやつの兆候かも……」
誰ともなしに不安を口にする。七つ目の不思議(給食室が消えた理由)は、たしかに“最後の給食”を再現することで元に戻りかけているようだ。だが、その瞬間、三人の背後にまるで空気が振動するような異変を感じ、思わず身構える。

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