最終章②:最後の試練と「それな」の誓い

1. 闇の廊下に続く扉

黒い影が招くように浮かび上がった扉を開き、ソレナトリオ(レオ、ナオキ、ソウタ)は薄暗い廊下の奥へ踏み込んだ。そこは、まるで別次元としか言いようのない空間。校舎の構造から外れたように、天井は高く奥行きも不明瞭で、足元を照らしても光が吸い込まれるように消える。

「やっぱり……普通の廊下じゃないな」
ナオキがメガネを押し上げつつ声を落とす。レオは懐中電灯を振り回しながら、「なんだってんだ、ここ……」と苛立ちまじりに呟く。ソウタは背中を合わせるように二人と立ち位置をとり、どこから迫るかもしれない不気味さに耐えていた。


2. 最後の試練への導き

そのとき、壁の先にかすかに揺れる光が見えた。あるいは闇が光を拒んでいるだけかもしれないが、そこには扉らしきものがまた一つあり、黒い影が再びそこへ溶け込むように動いていた。
「もしかして、あれを開けろってことか……?」
レオが焦りを帯びて走り出そうとするが、ナオキが腕を掴み「落ち着け。八つ目の不思議はこれまでとは次元が違うかも」と制止する。ソウタは一人で突っ込ませないよう、レオを支えながら一緒に進む決意を固める。
三人は心の中で覚悟を高めながら、扉へと近づいていく。まるで“最終試練”を用意されたかのように、空間が揺らぎ、この先に待つ運命を示唆していた。


3. 扉の向こうの“記憶”

扉を開けると、そこには廊下というよりは巨大な“教室”のようなスペースが広がっていた。ただ、机も椅子も半透明になっており、かつての人影が残像のように浮かんでいる。
「これは……昔の教室?」
ソウタが眼を見張ると、レオは懐中電灯を振りながら、「まるで記憶の断片みたいだな」とつぶやく。ナオキも困惑しながら、「ここは“忘れられた生徒”が過ごしていた場所なのかもしれない」と推測を口にする。
部屋の中心には、ぼんやりと浮かぶ黒い影が佇み、まるで三人を待ち受けるかのように視線を合わせてくる。先ほどまで漠然とした恐怖の塊に思えたが、いまは明確に「人型」に近い輪郭を帯びていた。


4. 忘れられた生徒の悲嘆

影の形をよく見ると、小柄で学ランのような服装のフォルムが見える。顔までは識別できないが、**“助けを求める表情”**が伝わってくる気がする。部屋には生徒たちの笑い声や、教師の叱咤、そして彼だけが存在を無視されるようなシーンがぼんやり映り込む――まるで投影された幻だ。
「こんなの、見ていられない……」
ソウタが心を痛め、ナオキも「これが“忘れられた生徒”の記憶なのか。みんなから無視されて……?」と声を沈める。レオは怒りにも似た感情を覚え、「ひどいな。こんなの……」と歯噛みする。
影がほんのわずかに動き、まるで三人に何かを訴えようとしている。言葉にはならない悲嘆。誰にも気づかれず、存在を認められないまま、この鏡の世界に取り残されたということか。


5. 最後の試練――闇に飲み込まれるか、手を差し伸べるか

突然、床が揺れ、黒い影が波のように広がって三人を包み込もうとする。視界が暗転しかけ、レオは「くそっ、何だよ!」と叫び、ナオキは「冷静になれ!」と声を張り上げる。ソウタは足を滑らせそうになりながら、影に飲み込まれたかのように見える“生徒”を見つめる。
ここで逃げ出せば、彼の記憶は闇に沈んだままだろう。だが、三人が今まで乗り越えてきた不思議も、すべては“想い”を解放することで解決した。
「行くぞ……助けるんだ!」
ソウタが先に影へと手を伸ばし、レオとナオキは声を重ねる。「それな!」
合言葉はまるで地響きのように暗闇を振るわせ、三人が手をつないで“忘れられた生徒”の想いへ飛び込む形になる。最後の試練は、闇に飲み込まれるか、手を差し伸べるかの二択――ソレナトリオは自分たちが進むべき道を選び取るしかなかった。


6. 「それな」の誓い

咆哮のような風とともに、部屋の景色がぐにゃりと歪む。黒い影は渦を巻き、一瞬三人の意識を飲み込もうとするが、三人が手を取り合う一体感がそれをはねのける。
「理屈じゃなく、行動あるのみだろ!」
レオが吠え、ナオキも眉をひそめながら力強く同意。「絶対に見捨てない……!」
「そうだよ、一人じゃないんだ!」
ソウタの叫びと同時に、三人は声を合わせてこう言う。
That's it!"
鏡の世界の闇に響き渡る誓いの言葉は、忘れられた生徒を闇から救い出す力となるのか。

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