1. 「Core」を探す新たなヒント
動かすための“勇気”だけでは足りない――理科室の人体模型には「Core」と呼ばれる動力源が必要だという仮説にたどり着いたソレナトリオ(レオ、ナオキ、ソウタ)。だが、鏡の世界の理科室をくまなく探しても、それらしき物体は見つからない。
諦めかけた三人だったが、帰り際にふと廊下の隅に置かれた古い段ボール箱に目を留める。ナオキが埃を払いながら開けると、中には薬品の瓶や書きかけのノート、壊れた電灯のパーツなどが雑多に詰め込まれていた。そこでソウタが底のほうから、小さな球体を発見する。
「これ……何だろう?」
直径3センチほどの透明な球は、ところどころヒビが入っており、中に薄い液体が揺れているようにも見える。左右反転した文字のラベルが半剥がれ状態で貼られているが、判読は難しい。
ナオキが慎重に懐中電灯を当てると、その球体の奥でかすかな光がゆらめくのがわかった。レオは「これがCoreなのか?」と瞳を輝かせる。
2. 人体模型への装着
興奮気味の三人は、その球体を握りしめて再び理科室へ戻る。人体模型は先ほどと同じ場所に立ったままだが、何となく空気が変わった気がする。懐中電灯に照らされ、模型の胸にある空洞がはっきり見える。
「い、いくぞ……」
レオが意を決し、球体を胸の穴にそっとはめ込もうとする。ナオキは球体が壊れやすそうなので、横からそっと支え、ソウタは目をそらしながらも心配そうに見守る。
金属パーツが軋むような音がして、一瞬だけ風が巻き起こった。球体は胸の穴にはまり込むように落ち着き、うっすらと光を放ち始める。まるで心臓に血が通ったかのように、模型の内部で液体が揺れるのが見えた。
3. 動き出す骨格――術者の意志
三人が息を飲んで見守る中、人体模型の関節がカタカタと揺れはじめた。背骨がきしむ音が響き、肩のジョイントが微妙に回転している。ソウタは「うわあ……!」と後ずさりし、ナオキは懐中電灯を持つ手が震えている。
「まじで動くのか……!」
レオが興奮と恐怖をないまぜにしながら息を呑むと、模型の足がぎくしゃくと動き、一歩だけ前に踏み出した。関節が擦れる音とともに、まるで人間のような姿勢を作り出そうと試みているかのようだ。
しかし、模型はすぐにカタリと床に膝をつき、その動きを止めてしまった。胸の球体はまだ淡く光っているが、まるでパワー不足のように見える。レオがそっと肩に手を置くと、わずかに肩のジョイントが反応した。
「足りないのは……“術者の意志”かもしれない」
ナオキは先ほどのメモを思い出しながら口にする。純粋な勇気や意志が、鏡の世界での仕組みを動かす鍵になる――そう示唆されていたからだ。
4. ナオキ、理屈を超える瞬間
「術者の意志……理論的には説明できなくても、ここじゃ必要なのか」
ナオキはくやしそうに唇を噛みながらも、一歩前へ進む。いつもはレオに行動を任せがちだが、ここで自分が踏み込まなければ真相に届かない気がした。
模型の前に膝をつき、胸の球体をそっと押さえながら、ナオキは静かに語りかける。
「もし、お前が動きたいなら……動いてみせろ。俺は……この不思議を解き明かすために、理屈を超えてでも理解してみせる」
言いながらも心臓が爆発しそうなほど緊張していたが、不思議と手は震えなかった。ソウタとレオはその姿を見つめ、「ナオキ……」と声を合わせる。
5. 結実する“勇気”――そして解決
しばらく沈黙が続いたが、やがて模型の胸の球体が明るく光りだし、骨格が再びきしみながら動き出した。今度はスムーズに腕を上げ、ぎこちないながらもしっかり立ち上がる。三人は固唾をのんで見守るが、模型は一歩、二歩と歩みを進め、そして再び動きを止めた。
「動いた……!」
ソウタが歓喜と恐怖が混じった声を上げ、レオは隣で「すげぇ……!」と感嘆する。ナオキは模型を支えながら、「やっぱり術者の“意志”がトリガーになるのか……」と困惑まじりに笑う。
数秒後、模型の胸の球体が光を失い、関節からカタリと音がして静止した。まるで一瞬だけ与えられた命が終わったかのような、儚い雰囲気が漂う。だが、これで十分だった。**“夜な夜な動き回る人体模型”**という七不思議は、仕組みも含めて解き明かされたのだから。
6. 第二の不思議、解決――「それな!」で再度決意
三人は呆然としながらも、模型の動く様子を目撃し、操る手がかり(Coreと術者の意志)を見出したことで「第二の不思議」を解明したと確信する。ナオキは安堵とともに疲れが一気に噴き出し、レオは「やったな!」と満面の笑みを浮かべる。ソウタはまだ足が震えているが、少しだけ自信を取り戻した顔をしていた。
「いろいろ理屈じゃ説明できないこともあるけど、二つ目の不思議、クリアってとこだな」
レオが言うと、ナオキは納得いかない表情ながらもうなずく。ソウタは心底ホッとした様子で「それな……」と口をそろえる。
こうして、**“動き出す人体模型”**の謎は、Coreと意志――つまり、科学と勇気が融合することで解決した。鏡の世界での七不思議は一筋縄ではいかないが、ソレナトリオは恐怖と戸惑いを乗り越え、また一歩、元の世界へ帰るための道を切り開いたのだ。
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