[Episode 7] Step by Stage! ~ Ich kann nicht glauben, dass ich Leiter eines Tanzkreises sein werde! ~ ~.

第7話「合宿計画の嵐と、初心者基礎練習のドタバタ」

合宿はどうなる? 翔の下調べ

 「見て見て、ここなんかどう?」
 日曜の昼下がり。大学構内のラウンジで、私はサークルメンバーと合宿の候補地をあれこれ探していた。メンバーの一人、大谷 翔(おおたに しょう)がスマホを操作しながら、興奮ぎみに画面を見せてくる。

 画面には「〇〇市青少年研修センター」とか「合宿プランあり」という文言が並び、施設の写真が何枚か。体育館や多目的ホールがあって、合宿所としても使われているらしい。料金も比較的安く、日程が合えば借りられそうだ。

「おお、いいじゃんここ! 体育館ついてるなら、練習もガッツリできそうじゃない?」
 合宿に最もノリノリな佐藤 真琴(さとう まこと)が、またもや声量MAXでテーブルを叩く。
「うむ。しかも安い、駅からバスも出てる、最高じゃん!」
「それに合宿所って、大浴場と夜のレクリエーションルームとかあるよね? 夜にパジャマパーティとか楽しそう!」
 そう言って目を輝かせるのは鈴木 真由(すずき まゆ)
。衣装や見せ方ばかりに熱心なイメージだけど、こういうイベントゴトにも目がないようだ。

 一方、**宮田 シズク(みやた しずく)**はスクロールする翔のスマホをじっと覗き込みながら、少し冷静な声で口を挟む。
「でも、ここって利用条件に“学生団体は○名以上”って書いてない? 私たちのサークルは人数多いけど、みんな参加できるわけじゃないし……そこはクリアできる?」
「おっと……確かに、初心者組やバイト勢もいるから全員が来るとは限らないね。最低参加人数に満たなかったらどうしよう」
 私、**桜井 小春(さくらい こはる)**もスケジュールや費用の面が気になって仕方がない。せっかく合宿を計画しても、予算オーバーや人数不足で中止になったら意味がないからだ。

 とはいえ、みんなのモチベーションは確実に高まっている。そこで私は「とりあえず全員にアンケートを取ろう! 日程と参加意欲を確認して、行けそうなら仮予約を入れる方向で」と提案。
「おれ、すぐにLINEでアンケート作るわ!」
 翔が頼もしげにスマホをカタカタ操作し始め、真琴と真由が「よろしくー!」とノリノリで応える。シズクも「現実的には2泊3日くらいが限度よね」と淡々と計画をメモに書き込んでいる。
 リカ先輩(青山 リカ)は就活真っただ中だけど、落ち着いたら合流するかもしれない。先輩がいれば心強いが、まずは私たち二年生を中心に進めていくしかない。

 こうして「合宿計画」は動き出した。あとは初心者組がどの程度参加できるかにかかっている――。


初心者組の基礎練習、いざスタート!

 同じ日の夕方、私たちは学生会館の練習室で「初心者組向け基礎練習」を開催することにした。先週から準備していた新スケジュールの一環だ。
 集合時間になると、初心者組が続々とやってきて、その数はざっと見ても10人ほど。けっこう多い……大丈夫かな? ちょっと緊張してきた。
「みんなー、今日は初心者向けの基礎練習をするから、気軽に参加してね。わからないことがあったら何でも聞いて!」
 私が声をかけると、**中村 咲(なかむら さき)und ... und佐々木 拓也(ささき たくや)**といった先日面談したメンバーも、やる気まんまんの表情で頷いてくれた。

 ここで登場するのが、今回の特別講師(?)として名乗りを上げてくれた真由とシズク。二人は得意分野が違うものの、基礎的なステップやアイソレーション(身体の部分的な動かし方)の指導ならかなりレベルが高い。
「はい、じゃあまずはストレッチとリズム取りね。体をほぐして、音楽に合わせて足踏みしてみましょう」
 と、シズクが冷静に説明する一方で、真由は明るく「はい、腕をぐーっと伸ばして~!」と盛り上げ役を務める。
 初心者組は戸惑いながらも、音楽に合わせて軽く体を動かし始める。少しぎこちないけど、みんな真剣な顔だ。

 さらに、事前に翔が編集してくれた「基礎ステップ解説動画」も活用。タブレットを持ち込み、画面に映る真由とシズクのステップをスロー再生で確認しながら、初心者組が真似していく。なかなか画期的だ。
「すごい、動画あると自分の動きと比べやすいしわかりやすい!」
 咲ちゃんが嬉しそうに声を上げ、拓也くんもうんうんと大きく頷く。私も「みんな楽しそうでよかった……」と安堵を覚えた。


真琴の熱血指導、しかし空回り?

 そんな中、真琴がふとスタジオに現れた。
「へへっ、アタシも手伝いに来たよ! …って、なにその動画? なんかハイテクじゃん!」
「真琴、すごいでしょ。翔が編集してくれたんだよ」
 私が説明すると、真琴は「いいじゃんいいじゃん!」と興味津々。

 ところが――真琴の指導が始まると、スタジオは一瞬で体育会系のノリになってしまった。
「よーし、みんな体力ある? 基礎ステップなんて、数こなせば慣れるって! ほら、あと10回、20回、いっきまーす!」
 熱い。熱すぎる。初心者組は真剣だけど、明らかに動きがついていっていない。
「ちょ、ちょっと待ってー!」
「もう無理……!」
 咲ちゃんと拓也くんの悲鳴が飛び交い、汗だくで息を切らしている。真琴は「え、まだいけるでしょ?」とキョトン顔。

 するとシズクが冷静にストップをかける。
「真琴、いきなりそんなに回数増やしたら初心者はバテるでしょ。適度に休憩挟まないと怪我するわよ」
「えー、そう? まあ確かに、アタシのテンションでやると大変かも……ごめんごめん!」
 真琴が頭をかいて謝ると、初心者組も苦笑い。まったく、熱血指導もいいけれど、加減が重要だ。

 私は慌てて「みんな、水分補給してね!」と声をかけ、スタジオの窓を開けて空気の入れ替えをする。こういうちょっとしたケアもリーダーの仕事……とはいえ、自分も息が上がってきた。ハードだなあ。


ステップ合戦、思わぬハプニング

 休憩後、初心者組と経験者組に分かれて練習を続行。すると、真琴が突拍子もない提案をする。
「ねえねえ、みんなでステップ合戦とかやらない? どっちが格好いいステップを踏めるか勝負、みたいな!」
 初心者組は「えぇ……」と戸惑いを隠せない。やっと基礎練を始めたばかりで、いきなり勝負とか荷が重いって思うよね……。
 でも真琴は全く動じず、「初心者組も簡単なステップを合わせて、チームワークで勝負すれば意外と強いかもよ!」とニヤリ。

 それに乗っかったのが意外にも佐々木 拓也くんだった。
「おもしろそう……! じゃあ初心者組で何かやってみます?」
 彼は普段おとなしいが、どうやら負けず嫌いの一面があるらしく、ちょっと燃えているようだ。
「じゃ、せっかくだから経験者組の代表は真琴と……うーん、シズク? 私か真由でもいいけど、せっかくだから実力派の二人にやってもらいたい!」
 私が提案すると、真琴は「いいねぇ!」と即答。シズクは「え、私も?」と一瞬戸惑いながらも、「まあ、いいわよ」と言って準備運動を始める。

 こうして急きょ開幕することになった「ステップ合戦」。初心者組はあらかじめ動画で習った基礎ステップを一斉に踏む作戦。経験者組は真琴とシズクが即興でカッコいい動きを繰り広げる。

 すると、これが意外な盛り上がりを見せた。音楽をかけると、初心者組がそろったタイミングで足を踏み鳴らし、軽く手を挙げてリズムを刻む。まだぎこちないが、みんなで合わせようと必死になっている姿は輝いている。
 対して真琴とシズクは、息の合ったコンビネーションでメリハリのある動き。真琴が大きくジャンプして着地した瞬間、シズクがクールにターンを決める――という流れが決まり、周囲から「うわああ!」「すごーい!」という大歓声。

 しかし、その瞬間――真琴がまたもやジャンプの勢い余って足を滑らせ、シズクの足元に突っ込むように転倒!
「わあっ!」
「きゃっ……!」
 二人は盛大に絡まって倒れ込み、スタジオ中が一瞬ヒヤッとした空気に包まれる。

 幸い、どちらもかすり傷程度で済んだらしいが、シズクは照れくさそうに「痛たた……もう真琴ったら、また勢いだけで……」と呟き、真琴は「ごめん、シズク……!」と真っ赤な顔で謝罪。周りの初心者組は「大丈夫ですか!?」と心配しつつも、その光景に思わず笑ってしまう。

 なんともドタバタだが、それでもみんなの笑い声と拍手がスタジオに響く。そう、これが私たちのサークルなんだよね――。


連携が生まれた瞬間

 ステップ合戦(?)が終わり、初心者組と経験者組が混ざってお互いの動きを確認し合う時間が続く。真琴とシズクは床で転んだ拍子に脚や腕を軽く打ったものの、大怪我はなく済んだらしい。
「お騒がせしました……でも、みんなのおかげで楽しかったわ」
 シズクはクールに見えて、その実少し照れている様子。真琴は「また失敗しちまった……」としょんぼりしながらも、「でも、みんなが喜んでくれてよかった!」と笑顔を浮かべる。
 一方で、初心者組の人たちが「息を合わせる楽しさ」を味わったのか、「もうちょっと振り合わせてみたいです!」とやる気を見せ始めた。私もそんな姿を見て嬉しくなる。

 練習の終わり頃、咲ちゃんが私のところに寄ってきて、小さく頭を下げた。
「小春さん、こんな練習を企画してくれてありがとうございます。最初は不安だったけど、なんだか一緒に頑張れる仲間ができた気がして……」
「いえいえ、こちらこそ嬉しいよ。もっとダンスを楽しめるように、一緒にがんばろうね!」
 そう言いながら私が手を伸ばすと、咲ちゃんも笑顔で頷いてくれる。サークル全体が、少しずつ前に進んでいる――そんな実感がこみ上げてきた。


合宿実現なるか?

 練習後、合宿アンケートの結果を集計した翔が「おーい! みんなちょっと聞いて!」と声をかける。テーブルにスマホを置いて、表示されたグラフを見せる。
「参加したい! って人がけっこう多いぞ。2泊3日でもOKって人も、人数的にはクリアできそうだな」
「本当!? よかったぁ……」
 真由がホッと胸をなでおろし、真琴は「よっしゃー!」と拳を突き上げる。シズクも「何人ぐらい参加希望なの?」と興味深そうに覗き込む。
「だいたい15人以上は集まりそうだな。あとは空いてる日程と合宿施設の空き具合がマッチすれば、予約できるはず」
「おおー、それだけ参加すれば盛り上がりそう!」

 私も参加メンバーの顔ぶれを確認してみる。初心者組からも5~6人が「頑張って参加します!」と書いてくれていた。費用の問題で迷っている人もいるけど、もし行けたら大きな練習成果が期待できそうだ。
「じゃあ、正式に問い合わせしてみる?」
 私が提案すると、翔が「おれがやっておくよ」と即答。頼もしいな。

 ただ、合宿とはいえ、施設の空きや交通費の問題、そしてバイトのシフトや授業との兼ね合いなど、課題はまだ山積み。私はメンバーの予定表を整理して、なるべく多くの人が参加できる日程を見つける必要がある。
「うーん、またリーダー業務が増える……けど、頑張るしかないよね!」
 私はメモ帳を広げながら気合を入れ直す。こういうときこそ、リーダーとして踏ん張りどころだ。


今後の課題と、小春の決意

 初心者組は少しずつダンスに慣れ始め、合宿計画も動き出している。メドレーの各パートづくりも進んでいるし、衣装についても真由と翔が本格的に動いている。
 だけど、同時に新たな心配も湧いてきた。本番まであと1か月半、時間はどんどん減っていくのに、まだ完成形が見えていない。合宿で一気に仕上げられればいいけど、果たして間に合うのか……?
「焦っても仕方ない。でも、油断してたらあっという間だし……」

 その夜、自宅に帰ってから私はリカ先輩にLINEで報告した。

小春:合宿、みんな割と乗り気です! 施設の予約状況次第ですけど、2泊3日で計画してみます。
リカ先輩:いいね! みんなのやる気が高まるのはいいこと。あと、初心者組も楽しんでやってるみたいで良かったじゃん。
小春:はい! ちょっとずつ前進してる感じがします。
リカ先輩:時間は限られてるけど、焦らずしっかり取り組めば、きっと最高のステージになるよ。自信持ってね。

 先輩の言葉を読んでいると、不思議と疲れが軽くなる。よし、もう一頑張りだ。
「リーダーって大変だけど、こうしてみんなを繋げられるなら、やる意味はあるよね」


Epilog

 あの日、急にリーダーを任されてから数週間。何度もドタバタしながら、ここまで来れた。これから先も、きっと問題は山ほど出てくるだろう。でも、初心者組も含めてみんなでワイワイ乗り越えられると信じている。
 文化祭本番に向けて、私たちの“ステップ”はまだまだ続くのだ――。

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